研究課題/領域番号 |
20K13123
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
田村 祐 関西大学, 外国語学部, 准教授 (40826385)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 数の一致 / 第二言語習得 / 文処理 |
研究実績の概要 |
本研究は,英語の第二言語学習者が持つ屈折形態素の知識とその処理メカニズムについて,(a)語彙処理,(b)文処理,(c)形態素とそれが持つ意味のマッピングという3つの観点から習得困難性を統合的に説明する仮説の生成を目指すものである。特に,複数形形態素を取り上げ,その処理を英語母語話者のそれと比較することを通じて,学習困難性がどの領域に生じるのかを特定することを明らかにすることを試みる。 当初の計画では,2021年度は予備実験で得られたデータの解析と学会発表を行う予定であった。そして,その後本実験のデータ収集を開始する予定であった。しかしながら,2020年度の進捗状況が大幅に遅延した影響で,2021年度内に行う予定であった予備実験と本実験を実施する事ができなかった。 しかしながら,webベースの実験構築に取り組み,コンピュータ上で本研究の中核となる実験課題を行うことが可能な環境の構築が完成した。ただし,現段階では実験で取得したデータをウェブ上のデータベースに自動的に保存する仕組みが完成していない。データベースに実験データが保存される仕組みを構築することで,参加者にとっても実験に参加するハードルがさがり,実験参加者募集の段階でのメリットが見込まれる。 実験構築と並行して,上記(b)の文処理についての研究を国際学術雑誌に発表した。この研究では,学習者が英語母語話者と異なるふるまいを見せた場合に,それが単なる知識の欠如や処理の非効率性ではなく,学習者が持つ中間言語文法知識の影響である可能性が示唆された。また,その知識は実験中にターゲット文法項目に繰り返し晒されることがきっかけとなって活性化する可能性も示唆された。こうした知見は,第二言語の文処理メカニズムを明らかにするための重要な知見となりうると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目の2020年度に生じた遅れをまだ取り戻すことができておらず,2021年度も計画通りに行うことができなかった。よって,進捗状況は遅れていると判断した。しかしながらwebベースの実験環境構築は着実に進んでいるとともに,文処理についての研究を国際学術雑誌に掲載することができた点については一定の評価ができると認識している。現在は,実験データを自動的にサーバーに保存する仕組みの構築に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症によって社会情勢が大きく変化したことを受け,実験室での研究をベースとしていた研究でもウェブ上でデータ収集を行うように変化してきている。インターネット上でも無償でソースコードを公開したり,実験データ収集についての情報をまとめたウェブサイトも現れ始めている。こうしたウェブサイトは主に日本語ではなく英語で書かれているため,日本語を母語とする研究者にとってはまだまだハードルが高いのかもしれない。サンプルサイズ設計の観点からも大人数のデータ収集は今後ますます求められることも十分に有り得るため,言語系実験についての情報を日本語でまとめてウェブサイト上に公開することも分野の発展には求められるかもしれない。今後はそうしたことも視野に入れつつ,実験を行うことができる環境構築の完成を最優先に取り組む予定である。また,研究進捗の状況を鑑み,秋頃までには補助事業期間延長申請をするかどうかを判断したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が予定通り実施できなかったことで,実験に係る謝金支出がほとんどなかったことが大きな理由である。2022年度は繰越された経費を使用して実験データ収集を行う予定である。また,2022年度中に実験データ収集が円滑に進めばその結果をまとめた論文執筆も行うため,英文校閲の費用も見込まれる予定である。
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