日本人大学生の英語リメディアル学習者(大学に入学したにも関わらず中学校や高等学校の知識を習得できていない学生)を対象とし、授業内における動機づけの変化を探った。 本研究では次の3つの研究目的がある。1)英語リメディアル学習者の動機付けパターンにはどのようなものがあるか。2)Yamaoka(2019)で仮定された動機づけの発達パターンと同様のケースはみられるか。3)結果に基づいてどのような教育的示唆が得られるか。 これらの目的を踏まえ、昨年度得られた1)と2)の結果を踏まえ、3)の結果を研究成果として以下に記す。15名の大学1年生が必修の英語授業を週に1回4か月間、合計15週受講し、毎週授業終わりに動機付けを測る質問紙に答えた。彼らの英語力は実用英語技能検定(英検)の4級から5級に該当し、英語リメディアル学習者といえる。 得られたデータを複雑性理論によって質的に分析した。複雑性理論を用いることにより、ある特定の結果に至った過程に焦点を当てることができる。その結果、データは大きく3パターンの特徴的な変化の過程に分類でき、その特徴をそれぞれ明確に表している合計5名のケースを詳細に記述した。分析の結果、「動機づけが低い状態で不安定に変動」「動機づけが低い状態でやや不安定に変動」「動機づけが高い状態で不安定に変動」の3つの視点から教育的示唆が得られた。例えば、「動機づけが低い状態で不安定に変動」する場合は、教員は一方向的な教授法ではなく 双方向的なアプローチをとり、またタスクは実際の学習者のレベルよりもやや低いレベルのものを使用することが効果的であると結論付けられた。
|