研究課題/領域番号 |
20K13136
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
劉 驫 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (00756223)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 知覚訓練 / 補助教材 / インプットの頻度 / 中国語発音教育 |
研究実績の概要 |
日本の大学における中国語教育の問題点を解決し、ますます需要が高まるオンライン授業に対応するとともに、授業外学習を促進するため、本研究は効果的な中国語電子教材を構築する一環として、一音節声調、二音節声調、単母音、複母音、子音に焦点を当て、知覚訓練教材(perceptual training materials)を作成し、その効果を検証した上、効果的な発音指導を実現するために実施された。 具体的には、同大学における3つのクラスを対象に実験が行われた。知覚訓練を1回だけ実施するクラスを実験群A、2回実施するクラスを実験群B、実施しない(通常の内容)クラスを統制群とした。そこで、実験群Aと統制群の結果を比較したところ、一音節声調、単母音、複母音、唇音、舌尖音、舌根音など、比較的に難易度の低い項目に関して言えば、訓練の効果は限定的であることがわかった。その理由として、天井効果の発生や、インプットの不足が挙げられる。これに対して、二音節声調前音節と後音節、舌面音、そり舌音、舌歯音など、相対的に難易度の高い項目においては、知覚訓練の有用性が認められた。また、実験群Aと実験群Bを比較した結果、両群の正解率にはほとんど差がなかったことから、訓練の適切な実施回数は1回であることが判明した。 実験結果をもとに、今後は本教材を次のように更新する見込みである。まず、声調については十分な効果が得られたため現状維持とする。次に、母音については、複母音の正解率がやや低いため、現在の68問から100問程度まで増やしてインプットを強化する。さらに、子音については、舌面音、そり舌音、舌歯音の正解率を高めるため、現在の90問から約120問まで増やし、より困難な項目を重点的に強化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画「2020年度の研究計画」には、「補助教材の効果を検証すると同時に、最適なインプットの頻度を推定する」という研究目的があった。この目的を達成するために、2020年度では複数の実験が行われ、その結果、二音節声調前音節と後音節、舌面音、そり舌音、舌歯音など、相対的に難易度の高い項目における知覚訓練補助教材の有用性が認められ、訓練の適切な実施回数は1回であることが判明した。 以上のことから、研究計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2020年度の研究結果をもとに、補助教材の問題点を洗い出し、その問題点を解決するための改良を行う。その上で、改良された補助教材をオンラインで利用可能な形にし、九州大学のみならず、九州中国学会や中国教育学会での成果発表により、中国語教育に携わっているすべての方に利用してもらい、教育現場における発音指導の質の向上に貢献していく予定である。
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