本年度は主に前年度の実験結果をもとに、問題の追加等を含む教材のアップデートを行った(ver1.0からver1.1まで)。 まず、声調について説明する。一音節声調においては、教材による学習効果は限定的であったが、二音節声調の前音節と後音節においては、一定の効果が示唆された。というのは、一音節声調は難易度が低いため、天井効果が発生してしまい、教材の効果が現れにくいが、二音節声調の難易度は一音節声調より高いため、天井効果が生じにくくなり、多くの組み合わせにおいて有意差が認められ、効果が確認できたと考えられる。このため、二音節声調に限って言えば、十分な効果が得られたため、問題の追加を行わず、現状維持とした。次に、母音について説明する。単母音に関して言えば、天井効果が発生した可能性があり、教材の効果は限定的であるという結果が得られた。一方で、複母音については、問題数が少ないことによって十分なインプットを与えることができず、単母音より正解率が低い結果となった。これを改善するため、複母音の問題数、特にie、uo、ue(uにウムラウト記号)、iouを強化するため、現在の68問から96問まで増やし、教材のアップデートを行った。さらに、子音については、唇音、舌尖音、舌根音は難易度が比較的に低く、天井効果が生じやすいため、教材は十分に効果を発揮できなかったと考えられるが、舌面音、そり舌音、舌歯音は相対的に難易度が高く、天井効果は発生しにくいため、一定の効果が得られたと考えられる。そこで、舌面音・そり舌音・舌歯音については現在の90問から120問まで増やし、より困難な項目を重点的に強化することにした。 今後はアップデートされた教材(ver1.1)を実際に教育現場で活用し、複母音、舌面音、そり舌音、舌歯音における学習効果の有無について引き続き検証する予定である。
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