現代社会におけるコミュニケーション能力の社会的要請からポライトネス理論が脚光を浴び、数えきれない研究が行われ、多くの言語行動が究明されてきたと言えよう。ところが、円滑なコミュニケーション能力の台頭は、ポライトな言語行動の遂行だけに偏重をもたらし、それに反するインポライトな言語行動は望ましくない、避けなければならない否定的な対象として、いわゆるポライトな言語行動に反する一例としてしか扱わないという言語研究の偏りをもたらしてしまった。 インポライトネスは、社会的価値を脅かす言語行動として、互いの社会的価値の衝突から生じる言語行動である。ゆえに、インポライトネス研究は、社会的秩序や価値体系を明確に示すことにつながり、円滑なコミュニケーションの手助けとなる。そこで、日本と韓国の中学生、高校生、大学生を対象に攻撃的発話がどの程度、相手の社会的価値を脅かすか、すなわち攻撃的発話に対する不愉快度とそれに対する反応の相関関係を調査・分析した。 言語行動の評価は、談話参加者における社会的価値とは何かと共に、社会的力関係における利益の衝突がいかに反映されて言語行動として表れるか、これら要因を考慮しなければならない。そのため、利益の衝突として現れる攻撃的発話を相手の責任の有無に置き換え、聴者の責任による攻撃的発話と聴者の責任ではない攻撃的発話に分けた。その上、攻撃的発話の対象として、「性格」「能力」「外見」「所属」に分けた。つまり、社会的力関係や利益の衝突(責任の有無)、攻撃の対象(「性格」「能力」「外見」「所属」)を総合的に考慮した24場面を作成し調査した。 今回の調査を通し、各々の中学生・高校生・大学生は、価値体系の変化と伴い、社会的力関係や男女差、利益の衝突(責任の有無)、攻撃の対象(「性格」「能力」「外見」「所属」)による反応とそれに対する反応の相関関係を明らかにした。
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