研究課題/領域番号 |
20K13147
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
三上 仁志 中部大学, 人文学部, 准教授 (90770008)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 読解不安 / 促進的不安 / 外国語学習 |
研究実績の概要 |
テスト場面で注意力を向上させ、学習行動を促す不安感情は、促進的不安と呼ばれる。言語教育領域における本概念の提唱は、40年以上前にさかのぼる。しかし、言語不安に関しては、これまで抑制的な負の側面が研究され、その促進的な性質は、検証されてこなかった。促進的不安の性質を明らかとすることは、言語運用や学習における不安の役割をより包括的に理解することにつながる。以上の理由から、応募者は、自身の研究領域である外国語読解における促進的不安の性質を検証することとした。 著者は、自身が過去に実施したインタビュー調査の分析を進める中で、外国語読解に対する不安感が、テストパフォーマンスを向上させる可能性を確認した。その後、既存のレビュー論文を読む限り、言語教育の分野では促進的不安に関する研究の数は少なく、促進的不安と外国語読解の関係が、実証的に示されていないことを確認した。これに加えて、外国語を読解する際に感じる不安(読解不安)のような技能別の不安に関しては、体系的なレビューが存在しないことを確認した。このような理由から、著者は、読解不安に関するレビュー論文を執筆し、言語教育分野において促進的不安に関する研究を実施することの意義を示した。 次に、教育心理学の分野で一般的に使用されている促進的不安の測定尺度を読解不安に関する研究で使用することの妥当性について検証した。不安は、特定の状況や場面によって喚起される感情である。そのため、外国語読解に特有の促進的不安の性質について研究する際は、専用の測定尺度の開発が必要であると思われた。この仮説の検証を目的として、①既存の尺度によって測定された促進的不安、②外国語読解と関係する心理的変数、③読解パフォーマンスの関係について調査した。この研究結果を論文にまとめ、2022年4月現在、学術誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、促進的不安を測定するための尺度を2021年中に開発する予定であった。しかし、コロナウイルス感染拡大の影響を受け、尺度開発に遅延が生じた。開発した尺度の妥当性を検証する際に必要となる言語パフォーマンスデータの取得が、特に困難となった。以上の理由から、研究の進捗状況は、当初計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
進捗の遅れを取り戻すため、外部のデータ収集サービスなどを積極的に利用し、2022年の内に促進的不安を測定するための尺度を開発する。また、同種のサービスを利用し、開発した尺度の妥当性を検証するために必要なデータを集める。これらのデータを使用し、2022年度内に研究計画を完了させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
尺度開発のためのデータ収集が遅れ、謝金の支払いが発生しなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。次年度使用額は、外部のデータ収集サービス、学会発表、論文掲載などに使用する。
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