研究課題/領域番号 |
20K13167
|
研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
菅原 慶郎 小樽商科大学, 商学部, 客員研究員 (30865449)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 小樽 / 近江商人 / ニシン漁 / 出稼ぎ漁夫 / 明治 / 北海道産品 |
研究実績の概要 |
2020年度における最大の研究課題は、北海道小樽において江戸~明治期にかけて海運事業を展開した右近権左衛門家(福井県南条郡南越前町立河野図書館所蔵)の文書調査(写真撮影など)を敢行することであった。結果的に調査は、無事敢行することができた。あわせて予定外の成果として、右近家の関係文書として重要である滋賀大学経済学部附属史料館での近江商人関係の文書調査(岡田彌三右衛門家及び西川伝右衛門家)も敢行できた。両家は、前述の右近家と商品取引のほか、運搬業務の共用など深いつながりがあるほか、何より小樽とその周辺を一代拠点として活躍した商人である。とりわけ西川家は豊富な文書群が特徴的で、右近家文書の内容の裏付けをとることができる大変貴重なものである。 さて、右近家及び岡田・西川両家の調査は、新型コロナウイルス感染症の状況をみながらの実施となったため、年度末にせざるを得なかった。そのため実際に文書調査を生かした分析の時間をほとんど割くことができなかった。そこで先述の文書調査以前、本科研に関連する研究をどのように継続してきたのかについても記載する。結論から述べると、前述の西川家文書(科研採択以前から調査研究を継続していたため文書写真の一部は既存)を用いた成果報告及び論考を刊行することができた。成果報告としては、一般向けが中心となるものの、「三方よし研究会」にて「近江商人と北海道小樽」と題し、当家の小樽での活躍についての研究報告のほか、4回実施することができた。論考については、同じく西川家によるニシン漁に携わる本州方面から出稼ぎで渡道する漁夫の活動サイクルをまとめた『明治中期のニシン漁夫の雇用サイクル』(『小樽商科大学 人文研究』140号)など2点を刊行することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここでは、2020年度における進捗状況として、調査の実施状況と分析・成果の公表の2点に分けて記載する。 まず、2020年度の調査であるが、当初の予定通り、江戸から明治にかけて北海道小樽で商業活動を展開した右近権左衛門家文書の調査に着手することができた。あわせて追加で右近家と関係の深い近江商人の関係文書として、岡田彌三右衛門家文書・西川伝右衛門家文書の調査も実施した。 分析・成果の公表については当初、分析時間を多く必要とするため、年度初めに調査を敢行する予定が、世界的流行の新型コロナウイルス感染症の状況を見極めての日程選択を行ったため、年度末になってしまった。そのため、年度内に文書分析(解読及びデータの整理)の時間がほとんど取れなかった。そのため必然的に、本科研のテーマに沿って、これまでの収集した文書群を用いての研究を続けることになった。具体的には、前述の西川家を扱ったものとなるが、本科研の中心的なテーマでもある右近家と密接な取引があり、右近家の研究が深められる貴重な文書群でもあり、研究を進めることは本科研にも大いに関係するものである。実際にすでに両家を結びつける関係資料を多数見いだすことに成功している。 加えて、2020年度予定していたカメラ一式及び書籍類もほぼ予定通り購入済である。
|
今後の研究の推進方策 |
ここでは、2021年度以降における調査の実施予定と分析・成果の公表に2点に分けて記載する。 最初に、2021年度の調査の実施予定についてであるが、早い時期に敢行したいのは、江戸から明治にかけて北海道小樽で商業活動を展開した右近権左衛門家文書の2回目となる調査である。これは、2020年度実際に右近家文書の調査を敢行した結果、内容及び文書群の総量が想定よりはるかに膨大であったための臨時措置となる。続いて、当初の予定に組みこまれている富山市郷土博物館所蔵の廻船問屋の文書群である宮城家文書の調査も実施する予定である。可能な限り2021年度で調査については終了する予定である。引き続き、2022年度(最終年度)は、集中的に分析及び成果を発表する時間に充填することを目標とする。 次に、2021年度の文書分析を踏まえての分析・成果の公表についてであるが、2020年度調査を終了した分の右近家及び西川伝右衛門家・岡田彌三右衛門家の文書群を複合的に分析対象とする。具体的には、これらの商人たちが北海道小樽でどのような商業活動を展開していたのか、とりわけ本科研の中心的テーマともなる、そこで扱われる本州から流通する商品の種類や量を含んだ流通システム全体についての分析を継続する。そしてその成果は、現時点で決まっていることのみ掲出するが、2022年2月に開催予定の小樽市総合博物館での研究成果の公開の場であるミュージアムラウンジ(博物館講座)で公表する予定である。加えて、分析に応じて随時必要な書籍類は購入する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
追加で書籍を購入するのが、年度末となったため、納入期限を鑑み、結果的に調整金額となった若干の残額が発生した。今年度前半には新たな書籍の購入で早急に消化する予定である。
|