研究課題/領域番号 |
20K13168
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
大谷 伸治 弘前大学, 教育学部, 講師 (50826899)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 矢部貞治 / 協同民主主義 |
研究実績の概要 |
2022年度も新型コロナウイルス感染症の影響で、史料調査に行くことができなかったため、『オンライン版 矢部貞治関係文書』(丸善雄松堂、2018年)、『オンライン版 矢部貞治関係文書 補遺』(丸善雄松堂、2019年)を活用して、史料の翻刻・分析を進めた。 矢部が大学生時代に受講した講義筆記ノートのうち、末弘厳太郎の1924年度「労働法制」講義、吉野作造の1923年度「政治史」講義、神川彦松の1925年度「国際政治学概論」講義について、翻刻と分析を進めた。末弘の講義については、藤亮介・大谷伸治「末弘厳太郎の1924年度「労働法制」講義録:矢部貞治ノート(矢部家所蔵・衆議院憲政記念館保管)」(『人文×社会』6、2022年6月)として発表した。末弘の「労働法制」講義は、1921年秋ないし1922年10月に半期の随意科目(卒業要件外)として開講された日本初の労働法に関する講義であり、末弘が1946年に東大を退官するまで継続的に開講され、この間、1930年に講義名が「労働法制」から「労働法」へ改称され、1942年には通年選択科目(卒業単位内)になったといわれてきた。しかし、矢部ノートは現在知られる最も早い1929年の講義録に先立ち、さらに1924年からすでに通年で講義がおこなわれた事実を伝えるものであった。本稿では、全文翻刻を公にするとともに、ノートと『労働法研究』(1926年)以前の論攷との比較考証によって、1924年度講義は、末弘労働法学の核(労働契約論、労働組合(法)論、労働協約論、労働争議論)が一気に構築された場であったことを明らかにした。 矢部が委員として参加した、戦後初期1946年に活動していた外務省調査局第三課国内政治班「国内政治調査委員会」に関する史料群を調査した。委員会の活動を時系列に沿って整理し把握するとともに、各回の討議内容の分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度も引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響で、史料調査に行くことができなかったため。長期休業中は教育実習があり、出張に行くことが難しかった。 2021年度に『オンライン版 矢部貞治関係文書』(丸善雄松堂、2018年)、『オンライン版 矢部貞治関係文書 補遺』(丸善雄松堂、2019年)で、矢部の中学生~大学生時代の史料群の中から、矢部の政治思想の萌芽を物語る史料をいくつか発見した。時期的には大正後期であり、「戦後初期」を対象とする本研究とは齟齬があるが、協同民主主義の淵源を詳らかにするという点では意義があるものと思われ、2022年度も引き続き、その翻刻・分析をおこない、順次論文を執筆し発表した。 2022年度は、1946年に活動していた外務省調査局第三課国内政治班「国内政治調査委員会」に関する史料群を調査し、戦後初期の協同民主主義の広がりについて分析・考察を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
外務省調査局第三課国内政治班「国内政治調査委員会」に関する史料は、国立国会図書館憲政資料室所蔵「佐々弘雄関係文書」にも存在し、目録の題目で矢部文書に残る史料と照合したところ、矢部文書には残っていない史料がいくつかあることが判明した。実際に現地で閲覧し、不足する文書を収集したうえで、論文としてまとめたい。 引き続き、大学生時代の史料群についても翻刻・分析を進め、公にしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、首都圏に史料調査に行くことができなかったため。 次年度は、長期休業中に首都圏に史料調査へ行く予定である。また、これまで出張ができずデジタル史料の閲覧が主となっており、現在所有しているICT機器に負担がかかり調子が悪くなってきている。そのため、パソコンやタブレット端末などを購入したいと考えている。
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