研究課題/領域番号 |
20K13170
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野本 禎司 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (50846467)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本近世 / 武家領主 / 交代寄合 / 旗本 / 統治体制 / 近世領主制 / 在地代官 |
研究実績の概要 |
本研究は、交代寄合という武家領主を素材として、近世領主制の特質を追究するものである。その際、領主側と知行地側と双方の史料を活用して立体的に解明することを目指している。 2020年度は、福島県の須賀川市立博物館を中心に調査を進めた。本調査は勤務先である東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料学研究部門と同館との共同調査が基盤となっている。すでに手がけていた小針家文書約120点、廣田家文書約350点に加えて、安藤家文書約330点の撮影を完了することができた。いずれも交代寄合溝口家(6000石)の知行地の名主・在地代官を務めた家であり、今後内容分析を行い、領地支配の構造の解明を進めることが可能となった。 さらに溝口家と同時期に隣接して知行地を配置された旗本三枝家(6500石)の名主・在地代官家の文書調査を、同館学芸員の仲介にて進めることができた。経済基盤が同規模であり、交代寄合と旗本の性格・役割等を比較検討する上で好個の素材を得た。この調査に着手できたことは大きな成果であった。 なお、本研究課題の前提となる単著『近世旗本領主支配と家臣団』を刊行することができた。1000石台で両番筋に所属するエリート旗本家を対象として、旗本研究の新たな方法論を提起したものである。この方法論については、関東近世史研究会シンポジウム「旗本研究のこれまでとこれから」(2021年2月)にて発表し、本研究の現在地を確認することができた。また、5500石の五井松平家を中心に遠江国に知行地をもつ大身旗本家等を対象とした研究論文を「維新期における遠江国旗本家の動向―寄合五井松平家を中心に」と題して発表した。 また、研究協力者等と研究会を実施し(須賀川市立博物館、2020年11月)、本研究の方向性についての助言を得るとともに、今後の調査方針について有益な情報を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、須賀川市の調査に重点をおいて実施する計画であった。計画どおり交代寄合溝口家の知行地の名主・在地代官を務めた文書群の写真撮影を完了し、研究基盤を整備することができた。また、比較検討の対象として旗本三枝家の名主・在地代官家の文書調査に着手できたことで、本研究がより深みのあるものになることが期待される。また、単著刊行と学会発表により、本研究の方法を発信することができた。 以上から、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、須賀川市での調査成果を須賀川市立博物館テーマ展及び歴史講座にて市民に向けて発信する。また、撮影済みの文書群について目録を完成させ、公開できるよう進めるとともに、内容分析をおこない原稿化する。旗本三枝家の名主・在地代官家の文書調査についてもアルバイトの補助を得ながら継続して取り組み、写真撮影、資料の読解を進める。また、昨年度実施できなかった新発田市立歴史図書館所蔵の交代寄合溝口家の領主史料の調査を行い、領主支配を立体的に把握することを目指す。なお、感染症の状況に応じて、今後の調査先として資料所在情報をえた栃木県の那須歴史探訪館所蔵の交代寄合芦野家の家臣史料、茨城県歴史資料館所蔵の交代寄合本堂家とその家臣史料を視野に入れて、調査を実施していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定していた出張調査が感染症の影響により実施できなかったため、調査旅費に残額が生じた。これら調査中止にともなう繰り越し額については2021年度に延期して支出する予定である。また、調査に随行するアルバイト等の人件費支出が合わせて見込まれる。
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