研究課題
若手研究
本研究プロジェクトでは、尊王攘夷思想の形成過程と流通過程、受容過程について江戸幕府の出版統制や昌平黌等の同時代の学知との関係から再検討を行った。その結果として、尊王攘夷思想の形成過程における柴野栗山の文章の役割、尊王攘夷思想とも連関する他の書物の流通状況の解明、出版統制令の解釈の深化、比較史上の論点の模索等について、一定の成果を得た。
日本近世史・思想史
本プロジェクトの成果は、学術的意義の観点では、後期水戸学や昌平黌や出版統制の研究の進展に資するのみならず、明治維新史や「近代化」の捉え直しに寄与する点も少なくないと思われる。また、社会的意義という観点からすると、しばしば西欧由来の概念として扱われてきた「出版の自由」「言論の自由」といった現代(そして、おそらくは将来)においても重要なテーマを、近世・幕末日本の経験に即しつつ明清中国、近世・近代フランス等の諸経験と併せて比較検討する視座を提示できるのではないか、と考えている。