研究課題/領域番号 |
20K13172
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡本 真 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (50634036)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本史 / 交流史 / 外交文書 / 史料学 / 古文書学 / 書誌学 / 中世 / 近世 |
研究実績の概要 |
今年度は、主として3つのテーマについて、研究を推進した。ひとつめは、豊臣秀吉関係外交文書の諸写本の比較検討である。特に1592年の小琉球(スペイン領フィリピン)宛豊臣秀吉文書については、原本が所在不明で、漢文写本とスペイン語訳写本がしられているが、従来、写本間の位置づけが明らかでなかった。これについて本研究で検討をすすめ、使用言語においては前者の方が後者よりも原態に近いものの、内容においては、前者は草稿であり、後者の方がより最終版に近いと考えられるとの結論に至った。そして、このことを、別項に記載するように、12月に台湾で開催された国際シンポジウムにおいて報告した。 ふたつめは、永楽5年(1407)5月26日付足利義満宛明永楽帝勅諭の写本の調査と検討である。同勅諭についても原本は所在不明で、模刻の拓本や写本が複数伝来している。今年度には、他の研究課題と連携しつつ、そのうちのいくつかを調査し、従来知られていなかった特異な写本を見いだし、所在不明の原本を復元する手がかりを得るに至った。これに関しては、次年度も引き続き調査検討を実施し、成果を論文として公表することを計画している。 みっつめは、瑞渓周鳳撰『善隣国宝記』の諸写本の校異情報の電子テキスト化である。これに関しては、前年度にTEI (Text Encoding Initiative)のガイドラインに則した、テキスト構造化の国際標準に準拠したXMLデータとして蓄積する方針を定めた。この方針にもとづいた作業を、今年度も継続して実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けて、申請時点での計画とこれまでに実施できたこととの間には、少なくない差異があり、一部には遅れが生じている。だが、代替の方策を模索し実施することで、遅れの大部分は解消した。そのため、全体としては順調にすすめることができていると判断し、上記の自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度に予定していたものの、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により実施できていない海外調査については、可能であれば令和5年度に実施したいと考えているが、感染症の拡大状況以外の諸要因もふまえ、断念する可能性も考慮しつつ、適切に判断する。『善隣国宝記』の諸写本の校異情報の電子テキスト化については、情報の豊富さゆえに、全体について本研究計画期間内に終えるのは困難と見られるため、序文・および上巻に限定して正確性を確保したうえで、成果をとりまとめて公開する計画である。 その他の事柄に関し遂行に困難が生じた際には、状況に応じて適宜修正を加えることで対応したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、予定していた調査が実施できていないため。
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