研究課題/領域番号 |
20K13180
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
原口 大輔 九州大学, 附属図書館, 学術研究員 (00756497)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 貴族院 / 帝国議会 |
研究実績の概要 |
本年度も新型コロナウィルスの影響に伴い、史料調査のために出張する十分な時間を得られることができなかったため、国立国会図書館の遠隔複写サービスにより史料を入手し、また、本務校の図書館に所蔵されている刊行史料の検討を行った。 成果としては、本年度は昨年度に引き続き、貴族院議員・松本学の日記の刊行に向けて史料翻刻・校訂を行い、尚友倶楽部・原口大輔・西山直志編『松本学日記 昭和14年~22年』(芙蓉書房出版、2021年)を刊行した。併せて日記の解説も執筆し、当該期の松本の政治活動や思想について簡単に紹介した。その松本の政治的思想を分析する一助として、福岡県知事時代の松本が始めた全村学校運動なる農村振興のための社会教育政策を検討し、松本が自由主義や共産主義に対抗するために農村の「自助」に期待していたことを明らかにした(「松本学と全村学校運動の展開」『九州史学』第190号、2022年)。農村に対する松本のまなざしは戦時下の議員活動にも通底するものがあり、次年度に向けて新たな課題を発見することができた。 また、昨年度学会誌に投稿した、「昭和二〇年の貴族院改革論」(『日本歴史』第886号、2022年)が掲載され、戦後――終焉までわずかの期間ではあるが――の貴族院を分析する第一歩を踏み出すことができた。特に貴族院事務局における議会制度構想は参議院の制度設計を検討していくうえで重要な役割を果たしたと考えられる。次年度はこの点も検討していきたい。 関連して、議会政治にかかわる学会発表「立憲的制裁? ―星亨除名事件の再検討―」(2021年九州史学会日本史部会)、貴族院と地方利益を検討した論文「冷水鉄道敷設問題と貴族院議員・麻生太吉」(『エネルギー史研究』第37号、2022年)をそれぞれ発表し、史料集として寺内正毅関係文書研究会編『寺内正毅関係文書』第2巻(東京大学出版会、2022年)の刊行に携わった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響で、史料調査のために出張に行くことができず、検討に必要な史料の収集が十分に行えなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、①大政翼賛会成立過程における貴族院の動向、②戦時下における貴族院議員の全国視察、の二点の検討を予定している。最終年度となるが、一年延長も視野に入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により出張を伴う史料調査を十分に実施することができなかったため。
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