本研究課題の主要な目的のひとつである関係史料の調査や複製の収集などを、一昨年度・昨年度にひきつづき行った。具体的には、京都府立京都学・歴彩館や京都市歴史資料館、国文学研究資料館、学習院大学史料館などに赴き、調査を実施した。 上記の史料調査で集めた史料などを用いて、鷹司家の金融活動の実態を究明した。そのうえで、それが近世後期~幕末の朝廷において、関白・太閤などとして権勢を誇った公家である鷹司政通の朝廷運営・公家社会内での影響力にどのように作用したのかを、貸付先や差加金の問題などから考究した。 その成果の一部を、「19世紀前半の天皇・朝廷と幕府」(『シリーズ日本近世史を見通す ③』吉川弘文館)に反映させた。本論文は、タイトルのとおり、19世紀前半における天皇・朝廷と幕府との関係(=朝幕関係)、および公家社会の実態がいかなるものであったのかを、その変遷も含めて、具体的に詳述したものである(当然、鷹司政通の朝廷運営や公家社会内における影響力と鷹司家の金融活動との関係性についてもふれている)。刊行時期は未定とのことだが、原稿はすでに提出済みである。 また、「幕末の朝廷は、経済的に自立していたのか?」(町田明宏編『幕末維新史への招待』山川出版社、2023年4月刊行予定)や「幕末の天皇・朝廷の論じ方」(岩城卓ニら編『論点・日本史学』ミネルヴァ書房、2022年)にも若干関係する記述を書いた。さらに、幕府財政や朝廷財政の研究史、課題と展望などを論じた「朝幕財政史研究の可能性と課題」にも、当該研究課題の成果を活用した(刊行時期未定、原稿は提出済み)。
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