【研究目的】 本研究は、戦後の日本炭鉱史を労働と労働災害の視座から検討することを目的とする。より具体的には、ともに個人所蔵の未整理資料である「三菱高島礦業所端島炭坑関係資料」(仮称、以下、「端島資料」と略す)と「原田正純旧蔵三井三池炭鉱炭じん爆発事故患者関係資料」(仮称、以下、「三池資料」と略す)を調査・整理・活用することにより、戦後の炭鉱における労働災害と、労働災害をもたらす炭鉱労働のあり方・環境を多面的に分析・解明することを目指すものである。 【研究実施計画】 この目的のため、本研究では、(1)「端島資料」と「三池資料」の保全・整理・目録作成、(2)両資料の来歴・性格および関連資料の調査・把握、(3)両資料ならびに関連資料の分析を通じて労働と労働災害の視座から戦後日本炭鉱史を再構成する、という3つの課題を設定し、課題(1)・(2)を〈基幹的研究〉に、課題(3)を〈発展的研究〉に位置付けている。最終年度となった本年度は、引き続き課題(1)・(2)を継続し、課題(3)に着手した。 【研究成果】 課題(1)では、防虫・防カビ措置を講じつつ、「端島資料」の整理作業を継続し、特に情報量が豊富な「離職者名簿」のデータ化に注力した。課題(2)では、「端島資料」の混在が確認された福岡県直方市所蔵「筑豊文庫資料」の調査を継続した。「離職者名簿」のデータ化は、福岡県直方市所蔵分をも対象とし、過年度分とあわせて約2700名分のデータを採録した。また、調査の過程で炭鉱労働運動関係者の証言記録を収めた個人蔵のテープ50本(以下、「証言テープ」と略す)の存在がわかり、来歴確認と整理・デジタルデータ化・活字化を行った。課題(3)では、「離職者名簿」を通じた戦後端島炭鉱の労働者像の検討、「三池資料」の患者聞き取り記録の分析とともに、「証言テープ」の内容把握を進めた。
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