研究課題/領域番号 |
20K13187
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
増渕 あさ子 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD) (80867896)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 戦後沖縄史 / 冷戦史 / 開発援助 / 社会政策 / 軍事主義 |
研究実績の概要 |
本研究は、米軍統治下沖縄(1945-1972年)に対して行われた様々な援助事業を分析することで、沖縄が冷戦期を通して、どのような援助・救済をめぐるネットワークに組み込まれていたのか明らかにすることを目的としている。プロジェクトの初年度であった2020年度は、米軍統治期の日米政府における対沖縄援助・救済政策について精査することを目標として掲げていた。このうち、感染症拡大の影響を受けて、当初予定していた米国および沖縄での調査を実施することができなかったが、国立国会図書館での調査を複数回実施し、特に南方同胞援護会における沖縄援護事業について資料収集をすすめた。 また、以前の調査で米国国立公文書館にて撮影してきた資料群のうち、本研究に関わって、米軍輸送ネットワークと米国国際開発庁の関連性について書かれた資料を整理・分析した。同時に、冷戦期の「援助・開発」をめぐる国際事業について、特に外交史の観点から書かれた二次文献を読み進め、本研究の理論的・方法論的枠組みの構築につとめた。 具体的な研究実績としては、米軍統治下沖縄とハワイを結んでいた医療人材育成のネットワークについて論文にまとめ、韓国の学術誌に発表した。本論文では、米軍側の計画や思惑だけではなく、海外沖縄移民がどのように「郷土」沖縄の復興に積極的に関わっていたのか「沖縄救済運動」と呼ばれる動きについても関連づけて考察した。その他、南方同胞援護会の対沖縄活動については収集した資料をもとに、論文執筆の準備をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症拡大の影響を大きく受けて、本研究の根幹となる国外調査、特に米国での調査が実施できなかった結果、当初予定していた研究実施計画の変更が必要となった。しかし、こうした状況でも、遠隔地での複写サービスを利用したり、国内で短期間の調査を行い、必要最低限の資料収集を行うことができた。また、すでに収集した資料の分析や二次文献の読み込みを進めることができたため、本研究の計画時より、より多角的な視野で、隣接分野の研究とも関連付けながら研究の方向性を定めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
感染症の収束が見通せない状況が続くため、国外調査は当面の間は実施できないものとし、引き続き、国内調査をさらに充実させ、遠隔地複写サービスなどを利用した資料収集につとめたい。同時に、すでに収集した資料や分析をもとに、論文を執筆し、また、この状況だからこそ可能となっている、オンラインでの国内外学会で積極的に発表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大のため、当初予定していた、米国での国外調査および沖縄での国内調査が実施できず、予算として計上していた旅費が使用できなかったため。今年度は、状況をみながら、国内(東京や沖縄)での資料収集を実施するとともに、海外の調査機関を利用して資料収集にあたる予定であり、当該助成金を旅費・調査費として使用したい。
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