研究課題/領域番号 |
20K13190
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研究機関 | 神奈川県立金沢文庫 |
研究代表者 |
貫井 裕恵 神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 学芸員 (40782868)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本中世史 / 中世寺院史 / 古文書学 / 寺院組織 / 寺院史料論 / アーカイブズ / 寺誌 / 歴史叙述 |
研究実績の概要 |
本年度は、中世史料論における寺院史料の特質と新たな史料研究の方途を模索した。すなわち、金沢文庫本の会「名古屋市蓬左文庫蔵『斉民要術』紙背文書について(上)(下)」(『鎌倉遺文研究』45・46、2020年)では、典籍と紙背文書の関係に着目し、料紙の再利用の様相を具体的に把握するために史料紹介を行った。今後、文書料紙に用いられた料紙が、典籍として二次利用されるサイクルについて、本成果をもとに復元したい。 また、聖教と紙背文書の関係や、中世寺院のアーカイブズの価値と魅力について、「国宝 金沢文庫文書データベース 公開記念特別展示 ようこそ 金沢文庫文書へ―中世の病と祈りを素材に―」(神奈川県立金沢文庫、2020年)として展覧会を開催し、冊子を配布することで、広く一般の方々にお伝えした。 なお、他の寺院史料を研究の対象に据える他科研と合同で、第3回 日本宗教文献調査学 合同研究集会(2020年2月、オンライン開催)を開催することで、広く寺院史料を扱う研究者あるいは関心を寄せる一般の方々に、寺院史料調査の書誌と方法に関わるプラットホームの場を準備することができた。 今後は、本年度の基礎的な研究成果をもとに論文を作成していくことで、中世寺院史料の特質を析出していくこととする。個別寺院の史料研究にとどまらない、寺院間のネットワークを意識しながら、寺院史料総体としてのアーカイブズのありようを探求していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のとおり、中世寺院に集積された古文書・典籍・聖教の様相について、書誌学的な検討をはじめ、調査成果を発表することができた。今後、他の典籍や聖教類の調査を実施し、書誌情報を整理していくことで、論文執筆に向けた準備を進めたい。 一方でコロナ禍により、史料調査、とくに寺院史料調査の実施がほとんど叶わなかった。状況をうかがいながら、本研究にかかる調査を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍のなかで、調査を実施することが困難な環境のなか、可能な限りの史料調査・研究を進めることができたので、今後改善状況を見極めつつ、調査を実施することで、本研究課題を進めていきたい。 また、本年度成果を発展的に検討した上で、論文として発表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、本研究課題にかかる調査・出張の延期を余儀なくされたため。新型コロナウィルス感染症の状況をみつつ、可能な範囲で調査を実施していきたい。
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