研究課題/領域番号 |
20K13193
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大塚 修 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00733007)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イラン / 歴史書 / 地理書 / 『オルジェイトゥ史』 / ハムドッラー・モストウフィー / イルハーン朝 / ティムール朝 / 写本研究 |
研究実績の概要 |
初年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、海外の図書館・研究機関における史料調査が不可能となり、大きな計画の変更を余儀なくされた。その影響で、新史料の発見や入手という成果をあげることはかなわなかったが、その時間を、既に入手済の写本や刊本の分析に費すことができた。主に、歴史書や地理書における「イラン」という語の使用例を収集し、その年代や地域ごとの傾向について、分析を進めた。その他、史料校訂・訳注の作成を進め、幾つかの研究成果を公表した。
史料校訂・訳注。ティムール朝時代に編纂されたと考えられる『集史続編』の校訂・訳注作業を進めた。これ以外に、イルハーン朝時代に編纂された『オルジェイト史』の校訂・訳注の作成を、共同研究という形で進めている。
研究成果の公表。新型コロナウィルス感染拡大の影響により、活動の場が制限されたものの、オンラインという形で幾つかの研究報告を行うことができた。特筆すべき成果は、イラン・イスラーム共和国ガズヴィーン市で開催された「ハムドッラー・モストウフィー・ガズヴィーニーの科学・文化的遺産学会」にオンラインで参加し、研究報告・情報交換を行ったことである。ハムドッラー・モストウフィーの諸著作の分析は、イラン概念研究にとって重要な意味を持つもので、イランで開催された学会に参加し、多くの研究者と情報交換を行い最新の研究成果を確認できたことは、本研究課題にとっては大きな成果となった。これ以外に、国際的な共同研究 Perso-Indica に寄稿した、カーシャーニー著『歴史精髄』とハーフィズ・アブルー著『改訂版集史』に関する二つの事典記事(英語)がオンライン上で公開された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、海外の図書館・研究機関における史料調査が不可能となり、残念ながら史資料の収集には大きな遅れが生じてしまった。一方で、近刊の写本目録を積極的に購入することで史資料調査の事前準備を行い、今後感染が落ち着き次第、海外の図書館・研究機関で史資料調査を開始できる態勢を整えることができた。それに加え、史資料の分析については順調に進めることができており、その成果を公表できているという点から、新型コロナウィルス感染拡大の影響による研究の遅れはそこまで大きなものではないと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き史資料の分析を進めていく。また、新型コロナウィルス感染が落ち着き次第、いつでも速やかに海外の図書館・研究機関における史料調査を開始できるよう、準備を整えていく。2020年度に研究報告を行った「ハムドッラー・モストウフィー・ガズヴィーニーの科学・文化的遺産学会」の論文集はイランで出版される予定で、それに掲載するペルシア語論文の執筆を進める。また、出版を視野に入れて作業を進めている『オルジェイトゥ史』の校訂・訳注の完成を急ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、海外の図書館・研究機関における史料調査が不可能となったため、次年度使用額が生じた。海外の図書館・研究機関での調査が可能になり次第、使用する予定である。もし2021年度も調査が難しい状況が続く場合には、史資料の購入費などに充てる予定である。
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