研究課題
若手研究
本研究では、清朝の公文書、チベット語の伝記史料、外国人の調査記録や現代中国の地方志等を網羅的に分析し、近世アムド・チベット社会形成の背景を分析した。その結果、清朝が18世紀中葉のジューンガル滅亡によりアムド地方の統治に関与する必要がなくなった一方で、ダライラマ政権はモンゴル遊牧勢力との間の紐帯を維持するために現地の交通拠点の確保に積極的に関与したことを見出した。そして、近世のアムド地方では、清朝の主体的関与の外で近代に繋がるチベット社会が形成されたことを明らかにした。
清代チベット・モンゴル史
本研究では、前近代史と近代史、ならびにチベット研究と清朝研究・内陸アジア史研究とを結びつける成果を得られ、当該期の研究に有効な手法を提示できたことに学術的意義がある。また、チベット史を境界地域から捉え直す視座の重要性を提示できた。加えて、近年立て続けに刊行された清朝史料の価値を提示できた点も重要である。本研究は、現代の民族問題の背景を理解する上で必須といえるもので、成果の一部を概説書のコラムや一般向け雑誌への記事として掲載する等、社会的意義も認められる。