研究課題/領域番号 |
20K13195
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
阿部 尚史 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (20589626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イラン / アルダビール / シェイフ・サフィー=アッディーン廟 / アルダビール文書 / カージャール朝 / ワクフ |
研究実績の概要 |
本研究はイラン北西部アルダビールのシェイフ・サフィー=アッディーン廟にかんして、とくにサファヴィー朝滅亡後(1722年以降)に廟がどのように存続したのか、廟に残された文書史料(アルダビール文書)などを基に分析を進めている。本年度は、廟の不動産目録というべきsarih al-melkという史料の19世紀要約版を考察した。 廟不動産目録Sarih al-melkは、サファヴィー教団のなかで古くから作成されてきた史料で、代々の教団長が個人的に作成していた。それが、16世紀後半にサファヴィー朝のタフマースブ1世の命令により、廟財産を網羅する目録が作成されることになった。17世紀のアッバース1世期にも新しいワクフ財の目録が作成された。 同時に2021年度の研究では、この不動産目録が実際に廟の財産管理に有意義に機能したことも、廟に所蔵されていたアルダビール文書やその他の文書史料も用いて断片的ながら明らかにした。 サファヴィー朝滅亡以降、廟の財産が侵害される中でも廟財産目録は不動産管理に利用されていた。そうした有為性のため、19世紀後半に不動産目録の要約版が作成されることになった。その際、19世紀時点でのワクフ財の調査も行われ、調査結果が不動産目録に追記された。その調査は、現状を意識した現実的な判断に基づいていたことも本研究で明らかになった。また19世紀要約版自体は、実務利用を重視して作成されていたことがうかがえる。 この研究成果を論文として執筆して、「継承されるサフィー廟不動産目録」と題する論文として、『アジア・アフリカ言語文化研究別冊』第1号に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度も残念ながら海外調査は実施できなかったが、サフィー廟に関するこれまでの研究の一部をまとめて論文を執筆し刊行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
イランなどでの海外調査が実施できる目途がたったら、速やかに現地の関係者と連絡を取り、調査の準備を行う。 それまでは手元にある文献資料を用いて、研究を進めていく。 海外調査に研究費を充てる予定なので、助成予定の期間に海外調査が実施できない場合は、研究費を繰り越し、期間を延長して研究を行いたいと考えている。 サンクトペテルブルクにおける調査はロシアへの制裁の関係上実施は当面困難と考えられるので、代替としてジョージアのトビリシの文書館での調査に変更を検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外調査や学会報告が実施できなかったため。 海外調査が実施できるようになったら速やかにイランなどでの調査を実施したいと考えている。
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