研究課題/領域番号 |
20K13195
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
阿部 尚史 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (20589626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イラン / カージャール朝 / シェイフ・サフィー=アッディーン廟 / ムスリム聖者廟 |
研究実績の概要 |
本研究は、イラン北西部に位置するアルダビール市のシェイフ・サフィー=アッディーン廟が、18世紀初頭のサファヴィー朝崩壊後にも、どのように存続したか考察するものである。 2023年度はイランでの調査を行うことができた。アルダビールとテヘランで文献等の調査を行い、アルダビールとテヘランの現地で史資料を閲覧したほか、アルダビールの文化財保護局の研究員と意見交換・情報共有を行うことができたことが非常に大きな成果である。 2023年度には、廟の財産管理について、不動産管理・保全のために16、17世紀に作成された不動産目録が、19世紀に再編纂されたことをより深く分析し、同年8月にライデンで実施されたヨーロッパ・イラン学国際会議(査読付き)で報告した。この研究では、廟が長年財産保全のために目録を編纂する伝統の中に、この19世紀版の目録作成を位置づけられること、19世紀版がどのような資料を基に作成されたのか論じた。とくに19世紀要約版が、旧来の2版を基にしつつも、より実用重視であったことを示した。またこの研究に関して、欧州の研究者と意見交換も行い、研究の意義を国際的にも示すことができた。2024年3月には、欧州の研究者とともに東京で国際ワークショップに登壇し報告を行い、サフィー廟が、イスラーム法では認められていない「法人」的な機能を有していることを論じた。 このほか、不動産以外の財産の重要性にも注目しつつ、現在、目録類、文書類をはじめとする史資料の読解を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イランにおいては、コロナ禍と2022年9月以降の政治状況の不安定化により、一部研究機関(イスラーム議会図書館)で調査をすることができなかった。また、ウクライナ紛争の関係でロシアでの調査が困難であり、当初の研究計画で予定していたサンクトペテルブルク調査は実施の見込みが立っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長することで、コロナ禍で渡航できず、イランでの調査が不十分であることを補い、史料調査を実施する予定である。またサンクトペテルブルクでの調査は見通しが立たないため、代替として、旧ロシア帝国領で現在も関連する史資料を有するアルメニアのエレヴァンかジョージアのトビリシの図書館での調査、または欧州(イギリスかフランスなど)を行うことも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響で2020-22年度において、海外調査ができず、さらに2022年以降のロシアのウクライナ侵攻により研究計画に記載していたロシア調査の目途がたなかったため、差額が次年度に繰り越された。繰越金は次年度で状況が改善され次第、海外における資料調査を主たる目的として使用する予定である。
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