研究課題/領域番号 |
20K13204
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
光成 歩 津田塾大学, 学芸学部, 講師 (60863842)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イスラム教 / シンガポール / マレーシア / ムスリム女性 |
研究実績の概要 |
『カラム』で1950年から1969年まで掲載されていたコラム「千一問」の分析を行った。「千一問」は、読者からの日常的な宗教実践に関する質問と、それに対する知識人のイスラムの見地からの回答があわせて掲載される連載コラムで、質問群には、結婚・離婚などの家族にまつわる問題や多宗教社会における男女の距離など、女性をめぐる問題が生活者の視点から寄せられている。この質問群全体の構成と、そのなかでの女性イシューの位置を明らかにするため、質問群を分類して項目別一覧を作成した。社会科学的な知の枠組みである図書館分類表を用いた分類と、イスラム的な知の枠組みである法学見解集の項目を用いた分類、および、東南アジアのムスリム社会を基盤とするイスラム教の法学見解集の項目を用いた分類の三つの分類を並行して行い、脱植民地化期東南アジアのムスリム社会が直面した課題をより適切に可視化して分類するための課題を明らかにした。すなわち、地域特有の事情に即した質問群が分類を経て可視化できるような折衷的な枠組みと、一つの質問に複数の要素が含まれる場合のツリー形式以外の分類方法を検討する必要性が明らかとなった。分類枠組み自体が改訂途上の段階であるため、女性イシューの位置については、三つの分類枠組みから作成された三種の「千一問」質問群の項目別一覧それぞれについて検討した。この結果、女性イシューの全体における比重がよく現れた図書館分類表と、宗教実践、家族形成、公共空間での男女の振る舞いや装いといった領域に散らばって現れた法学見解集の違いが明瞭に現れた。後者から、社会の革新が論じられていた各分野において女性イシューがそれぞれどのような位置にあったかをさらに分析する必要性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「千一問」の分析は計画通りに進んでいる。国内外調査は新型コロナ感染拡大の影響で行えていないが、各国のアーカイブや研究機関が文献資料のオンライン公開を進めており、資料収集の観点では重大な障害は発生していない。
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今後の研究の推進方策 |
基礎資料である『カラム』の分析を進める。次年度以降に予定する国内外での調査については、状況に応じて判断し、翌年度以降に繰り述べることも検討する。オンラインで入手可能な一次資料も定期的に渉猟し、分析に活用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の拡大により、調査旅費を計画通り執行できなかった。
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