研究課題/領域番号 |
20K13204
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
光成 歩 津田塾大学, 学芸学部, 講師 (60863842)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イスラム教 / シンガポール / マレーシア / ムスリム家族法 / 多宗教社会 / 雑誌 / ムスリム女性 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
シンガポールで脱植民地化に伴う法制度整備が行われた1950年代から1960年代にかけてのムスリム家族法改革をめぐる議論を分析した。 第二次世界大戦後のシンガポールにおけるムスリム女性の社会的地位の向上に関する課題が社会においてどのように把握され議論されていたかを雑誌『カラム』および同時期の英語・マレー語メディアを用いて検討し、1950年代前半の『カラム』の議論の特徴を位置づけた。 具体的には、1950年代のシンガポールのムスリム社会における結婚観の変化を論じた。この時期は、混血の少女ナドラの結婚をきっかけとして植民地政府や英語メディアによる児童婚批判が起こる一方、強制婚、駆け落ち、自由恋愛といった話題を通して、女性に対する父親や後見人の権威を見直す議論が起こっていた。『カラム』は、英語メディアで焦点とされていた結婚年齢よりも女性に結婚が強制されることが問題であるとし、成人した女性に結婚に同意する権利を認めることがイスラム教に基づく婚姻改革であるとした。『カラム』は妻と夫を結婚の主体とする近代主義的な結婚観に依拠しており、こうした見解は伝統派知識人により逸脱であると厳しく批判されたものの、その後の家族法改革の主流となる考え方と符合しており、1950年代半ば以降に進められる家族法改革を後押しすることとなった。この分析は、研究発表「新婦の同意による結婚:脱植民地化期シンガポールにおける家族法改革と女性の権利をめぐる論争」(東南アジア学会オンライン例会「多宗教社会におけるイスラム的正しさの模索」、2022年5月21日)として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連資料の収集・整理・検討を含めた資料の分析は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度となるため、既刊の成果物も含めて資料分析の最終的な成果をまとめる。周辺領域の研究者とともに『カラム』およびコラム「千一問」を網羅的に使用した論文集を発行すること、また、本研究課題によって博士論文を大幅に改稿した単著を発表することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
市場価格の変動などにより支出合計額が予定を若干下回ることとなった。次年度に論文集の刊行や学会参加による支出を予定しており、最終年度予算と合わせて使用する見込みである。
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