研究課題/領域番号 |
20K13206
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小野 亮介 早稲田大学, 人間科学学術院, その他(招聘研究員) (00804527)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中央アジア / 新疆 / 東トルキスタン共和国 / タタール人 / カザフ人 / プロパガンダ / インテリジェンス / ロシア革命 |
研究実績の概要 |
2022年度はコロナ禍による制限も緩和されたため、ロンドン、台北で史料調査を実施し、それぞれの成果をシンポジウム等で報告した。 ロンドン調査(2022年8月)ではイギリス国立公文書館にて、①本研究の主要な研究対象であるスルタンベク・バフティヤール、テヴフィク・シェリフら第1次東トルキスタン共和国(1933-1934)関係者の足取り、②コロナ禍の中で本研究に関連して取り組んだ新疆軍事派遣団(1918-1921)の補足的史料、③戦間期日本のアフガニスタン、トルコなどで展開したテュルク系ムスリムへのアプローチなどについての文書史料を収集した。このうち①のバフティヤールについて、同時期に入手したインド国立文書館史料にも基づき、スイスの国際シンポジウムで報告した。報告では英領インド当局がバフティヤールを要注意人物として警戒していたことを指摘したが、ナチス・ドイツとも接点を持った可能性という新たな検討課題が生じたことにも触れた。なお、このシンポジウムの機会を利用して、メルトハン・デュンダル氏(アンカラ大学)と研究協力に関して打ち合わせもした。 台北調査(2022年11月)では上記②の新疆軍事派遣団に関する中国語史料の収集を目的とした。とりわけ、タルバガタイ駐在の田島が地誌の作成を企図し、近隣の県知事に送った質問票を確認できた。その内容の主に民政に関連するが、このことは、軍事派遣団がロシア内戦の情報収集に加えて、新疆に対しても政治的野心があったことを示唆する。これらの研究成果は2023年2月の講演会報告にも盛り込んだ。 また、2023年3月に再びイギリス国立公文書館を訪れ、上記③の文書史料をさらに収集したことに加え、1930年代に東京で発行されていたタタール語雑誌『新日本通報 Yana Yapon Moxbire』の総目録を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度、2021年度はコロナ禍のため国外での資料調査を実施できず、研究内容そのものを見直さざるを得なかったが、前記のように2022年度は3度国外調査を実施したため、軌道修正後の研究内容に関して概ね十分な史料を収集し、研究報告に活用することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は2022年度を最終年度としていたが、コロナ禍による遅滞のため、2023年度まで延長する。2023年度はこれまでの研究の集大成として、本研究の主体である「ウザクバイ」こと戦間期日本の軍人・外交官らによる中央ユーラシアのテュルク系ムスリムへのアプローチの破綻と評価できる「近東会議」(1938年、イスタンブル)に焦点を当てる。具体的にはトルコ語、ロシア語、英語など多言語の史資料を収集し、バフティヤールの活動経歴と照らし合わせ、新疆における反ソ的傀儡国家の樹立を目論んだ「ウザクバイ」らの野心がどのようなものであり、またそれが如何に現実性に欠けていたかを明らかにすることを目指す。 現時点では2023年夏にイギリス、フランス、トルコで史料調査を実施する予定だが、コロナ禍に加え、ロシアによるウクライナ侵攻や円安傾向により、航空運賃や現地滞在費は本研究出願時点での見積もりよりはるかに高くなっている。そのため、出願時に計画し、コロナ禍中に実施できなかったウズベキスタン、サウジアラビア、アメリカでの調査は断念せざるを得ない見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により2020年度、2021年度は国外調査が実施できず、本来の最終年度である2022年度のみでは残額を消化できなかった。従って2023年度まで延長し、前記「近東会議」に関する資料調査のため、トルコ、イギリス、フランスでの調査に主に充当する予定である。
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備考 |
(1)ベルリンで発行されたタタール語雑誌『民族の道』『新民族の道』の総目録サイト(2020年6月公開)。エントリー数約1570点(2023年3月現在、2022年度の追加エントリー65点)。 (2)東京で発行されたタタール語雑誌『日本通報』『新日本通報』の総目録サイト(2023年2月公開)。2023年3月時点では仮公開だが、約1600点のデータを入力済み。
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