本研究はアメリカ合衆国の政治文化に敷衍する「イスラエル例外主義」の形成・変容過程を、1980年代~1990年代初頭のアメリカ社会運動の展開に着目して考 察するものである。アメリカ―イスラエル間の良好な関係は、その存在が自明視される傾向にある。しかし、近年、その両国関係を下支えするアメリカ政治文化 の歴史的な構築過程とイスラエル例外主義の枠外にある思想や実践の展開に対する注目が高まっている。 この状況を踏まえ、本研究はアメリカ社会運動の展開を、1)国際社会との接触、2)国際的資源の流入・伝播、3)アメリカ社会との衝突という3つの局面 を検証することを通じて、イスラエル例外主義によって特徴付けられるアメリカ政治文化の形成・変容過程を再考している。あわせて、1980年代アメリカで進展 した「保守革命」の展開に留意し、中東問題に関連する社会運動の展開がアメリカ社会でいかなる意味で「脅威」と認識されたかを考察している。 本プロジェクト最終年度に当たる2023年度には、主としてこれまでの研究成果を整理することを目的に、著書の執筆に努めた。現在はFirst Draftのリライトを進めている最中である。また、福音派キリスト教徒のイスラエル認識に関する研究を追加で行なった。昨年度に収集したものの分析が完了していなった福音派団体の発行する雑誌Christianity Todayの分析やFRUS資料の追加調査等を行い、執筆中の著作に欠けていた部分を補った。
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