近年先進国ではポピュリズムが台頭し、その排外主義を露わにするようになった。民主主義的な価値である「多数の政治参加」のネガティブな側面と言える。こうした現代的問題を前に、本研究は前近代社会において「臣民」が「お上」にどのような動機からどのようなコミュニケーション回路を通じて働きかけ、またそれが社会全体にどのような帰結をもたらしたのかを明らかにすることを目指すものである。領邦―帝国という重層的な司法機構の中で臣民がその制度をどのように利用したのか、学識者などエリート層、役人、領主はそれにどう答えるのかを問う本研究は、上下双方向のコミュニケーションとしての支配実践を実証的に明らかにするものである。
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