研究課題/領域番号 |
20K13214
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
南 祐三 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (50633450)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 対独協力 / 粛清裁判 / 第二次世界大戦 / 第四共和政 / グレーゾーン |
研究実績の概要 |
2022年度の主な研究成果は、髙綱博文・門間卓也・関智英『グレーゾーンと帝国――歴史修正主義を乗り越える生の営み』(勉誠社、2023年)に寄稿したコラム「コラボラシオンの中のグレーゾーン――「反独コラボ」シャルル・モラス」(同書、pp. 183-198所収)である。これは戦前から変わらず、占領期も反ドイツ姿勢を保ちながらも、1945年1月にリヨンの特別裁判所で「敵との内通」で有罪判決を受けた、アクシオン・フランセーズの総帥シャルル・モラスを題材に、「反独コラボ」について議論した論考である。一貫した反独姿勢が明白でありながら、モラスが「対独協力者」として訴追されたことは、近年の先行研究でも「不条理をもたらしかねない」判断だったと評価されている。実際の裁判記録を史料として利用し、その不条理ないし不合理について考察したこの論考は、対独協力者に対する粛清裁判の問題点を浮き彫りにすることをめざす本研究にとって重要な成果となった。 また、2022年度中に刊行されるまでには至らなかったものの、ヨーロッパ極右についての研究書の翻訳を仕上げた。対独協力者の残党が戦後ヨーロッパ各地で新たな極右運動を牽引したことを論証した本書の翻訳は、現代の極右ポピュリズムの問題だけでなく、対独協力者の戦後を考える本研究にとっても意義のある仕事であった。 そして、2月後半には漸く渡仏し、パリの国立文書館で史料調査に取り組むことができた。予想以上に膨大な量の文書が残されていることがわかった。したがって史料蒐集はまだまだ不十分と言わざるをえないが、入手できた一部をみるだけでも、粛清裁判では何が問題視されたのかが窺い知れたことは大きな成果である。次年度も引き続き、現地での史料調査を実行したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、過去2年間で一度も実現できなかったフランスでの史料調査を実施することができた。したがって、漸く研究計画書に記したようなかたちで研究に取り組むことが可能となった。しかし、やはり渡仏できなかった過去2年のブランクが大きく、裁判資料の分析は大幅に遅れており、4年間を想定した本研究は全体としても依然として遅れていると言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
長期休暇を利用して渡仏し、史料の蒐集および分析に取り組む。ただし、上記のように粛清裁判の関連文書は予想以上に豊富に残されていることが判明したため、検討する史料の選別や限定を行う必要がある。時期で限定するか、文書の種類で限定するかはまだ思案中である。 また、2022年度に成果としてまとめるまでには至らなかった、1945~50年代半ばのフランス右翼の再編に関する研究発表ないし論文作成を行いたい。さらに、裁判記録を利用した分析をもとに、いずれかの研究会での研究発表と論文執筆を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
史料調査のための日数がじゅうぶんに確保できず、旅費が予定より少額で済んだために生じた残額である。しかし誤差の範囲であり、翌年度の旅費として使用したいと考えている。
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