研究課題/領域番号 |
20K13221
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
廣田 秀孝 上智大学, 外国語学部, 准教授 (20834021)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 米国史 / 移民 / 日系移民 |
研究実績の概要 |
本研究は、連邦移民政策の創成期である19世紀末から20世紀初頭のアメリカ合衆国(以下米国と略記)における同政策の発達過程を考察する。同時期に関する従来の研究の多くが、中国系移民の入国制限を目的とした中華排斥法に着目してきたのに対して、本研究は、同政策よりもはるかに多くの、中国系以外の全移民を対象とした一般移民法下で執行された、「契約労働者」と呼ばれた日系、メキシコ系、カナダ系、ヨーロッパ系移民に対する移民規制に光をあてる。具体的には、低賃金で働くこれらの外国人労働者への移民規制が連邦移民政策の発達にどのような影響を与えたかを、①移民制限が国家的政策へと発展する過程、②人種偏見が連邦移民政策へ統合される過程、③連邦移民政策に査証(ビザ)システムが導入される過程に分けて考察することで、連邦移民政策史を再考する。方法論的には、法律史、政策史、社会史、トランスナショナル・ヒストリーを統合した総合的な観点を導入する。 初年度に引き続き二年度は、二次文献の収集と分析を研究活動の中心とし、上記の3つの過程を考察する上で必要な歴史的背景や客観的事実を整理して把握した。 また、コロナ禍により海外の史料機関を訪れることが難しい中で、日系移民に関する一次史料の収集と分析を積極的に行なった。年度後半には広島県立文書館、国会図書館、早稲田大学図書館などの史料機関で史料調査を実施し、一次文献を入手することができた。これらの日系移民史料は、米国移民政策が日系移民に対して実際にどのように実施されたのかを今後分析する上で非常に有益である。 史料分析を進める一方で、United States Capitol Historical SocietyやIrish Association for American Studiesといった海外の学会でこれまでの研究成果の一部を報告し、有益な批評を受けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の根幹となるのは、日本国内で閲覧・収集が不可能な一次史料を、米国の史料機関で調査・収集し、解析する作業である。研究の独創性を高めるためには、米国における複数の都市にある公文書館、歴史協会、大学図書館にて徹底した史料調査を行い、理解を深める必要がある。しかし残念ながら、初年度と同様にコロナ禍により、予定していた海外調査の全てを断念することとなった。 その一方で、当初の予定よりも多くの時間を二次文献の分析と、本研究遂行に必要な基本的な歴史背景の整理を行うことができた。また、年度内に国内史料機関での調査が可能となったことで、日系移民についての史料を収集することができた。結果として、当初意図していたよりも日系移民への比重が高まったが、研究全体としては着実に前進したといえる。 また、すでに収集、分析を終えた史料を基に、去年より執筆している論文に継続的にとりくみ、米国の主要な歴史学系ジャーナルへ投稿する準備を行った。また、本研究を最終的に研究書として出版することを念頭としたミーティングを米国オックスフォード大学出版局の編集者と定期的に行った。 これらを総合的に考えた上で、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き二次文献の収集と分析を進め、二年度に収集した日系移民に関する一次史料の分析にとりくむ。 可能な限り海外史料機関に訪れて一次史料を収集する。コロナ禍によりそれが困難な場合にはオンライン上で公開されているものなどを中心に、遠隔から閲覧できる史料をできるだけ収集することに努める。 史料調査を進める一方で、研究成果を論文および書籍としてまとめる作業と、国際学会での研究成果報告を継続して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外史料調査がコロナ禍により実施できず、助成金の一部が未消化となった。次年度の史料調査経費および研究書を中心とした物品購入費に充填する予定である。
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