研究課題/領域番号 |
20K13224
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
舘 葉月 武蔵大学, 人文学部, 准教授 (50803102)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 赤十字国際委員会 / 赤十字運動 / 第一次世界大戦 / 国際人道法 / 感情史 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、両大戦間期の国際赤十字運動の進展と国際人道法が整備される過程を検証し、「人道主義」が国際社会における主要な規範となり、それに基づく様々な活動が活発化する過程と、その限界・阻害要因を明らかにすることである。①「人道主義」概念の整理、②国際赤十字運動の組織化と国際法締結準備のプロセス、 ③人道問題をめぐる感情の動員と制御の分析を、目的達成のための具体的な課題として設定している。 ①については、歴史学における人道活動研究の主要な視角が、現在以下の5つに分類できると考えている。すなわち、1、個々の人道危機に関する研究の中での人道活動組織の役割の分析、2、複合的人道危機に関する研究の中での人道活動組織の役割の分析、3、人道活動組織の活動とその変化に関する個別研究、4、人道主義の活動史と概念史双方にまたがる研究(とりわけ近代的人道主義の始まりをめぐる議論)、5、植民地主義との関連の中での人道主義の研究、である。これらを踏まえて、研究史をまとめて投稿することを考えている。 ②については、19世紀後半以降の「戦争の人道化」をめぐる議論に関する書籍をデジタル・アーカイブを用いて収集し、検証を始めている。また、赤十字運動に関する研究者であるシェフィールド大学のネヴィル・ワイリー教授に連絡を取り、意見交換を行った。 ③については、共訳『感情史とは何か』(バーバラ・ローゼンワイン・リッカルド・クリスティアーニ著、岩波出版社、2021年)を出版した。また、感情史に関連する研究会や書評会に出席し、知見を深めるとともに意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、共訳を一冊出版し、本研究に関連する論文を2本、研究動向1本を雑誌に掲載したほか、日本語論文1本、英語論文1本、書評1本、小辞典項目1本を脱稿した。一方で、コロナ禍のため、検討していた海外でのシンポジウム報告や資料調査は実施できなかった。また、手元にある史料の読み込みと検証に十分な時間を取ることができなかった。後半はオンライン学会が定着したこともあり、感情史に関わる有意義な研究会に複数回参加することができたが、関心を共有する研究者と直接意見交換をする機会は限られた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の課題である①「人道主義」概念の整理、②国際赤十字運動の組織化と国際法締結準備のプロセス、 ③人道問題をめぐる感情の動員と制御の分析について、それぞれ研究を進めていく。 ①については、研究史の投稿の準備を継続して進める。②については、手元にある史料の読み込みを進めるとともに、第一次世界大戦後の状況に関する日本語論文を1本準備する。③については引き続き、人道主義への感情史的アプローチの可能性について検証していく。 状況が許せば、2022年2月もしくは3月にフランスおよびスイスで史料収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍により現地調査ができず、未使用額が生じた。次年度請求額と合わせ、2021年以降の現地調査、あるいは実施ができない場合は、資料購入費の一部として使用する計画である。
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