研究課題/領域番号 |
20K13227
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
辻河 典子 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (50724738)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハンガリー / 戦間期 / ナショナリズム / 第一次世界大戦 / 難民 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第一次世界大戦後にハンガリー領内に逃れた避難民が移住先で労働者を中心とする現地住民とどのように関わり合いながらハンガリー社会に統合されていったのかを明らかにすることである。 本年は、ハンガリーの新聞・刊行史料データベースArcanum Digitheca等を活用し、日本国内からでも確認可能なデジタル化された史資料を用いて予備調査を行いながら、先行研究の調査とその入手に集中的に取り組み、本研究課題の方向性を定めた上で、2月から3月にかけてハンガリーで史料調査を行う予定にしていた。しかし、COVID-19の影響による海外渡航の制限が続くため、ハンガリーでの史料調査を行うことができなかった。 一方、先行研究の把握などの予備調査が年度前半で完了すると考えていたが、より念入りに行う必要があると判明した。2020年は本研究課題を考える上で最も重要なトリアノン条約(ハンガリーが第一次世界大戦後に敗戦国として結んだ講和条約)の調印から100周年に当たり、ハンガリーではその節目の年に合わせて、研究論文集や学術論文の刊行が相次いだ。その数は当初の予想を遥かに超える規模であったからである。また、こうした研究成果の公表から、ハンガリー現代史をめぐる集合的記憶の中での旧領からの避難民の位置づけを再考する必要があると判明したことは大きな収穫であった。 なお、本科研費によるものではないが、2021年1月23日に基盤研究(B)「第二次世界大戦以前の中東欧・ロシアにおける反ユダヤ主義・ユダヤ人迫害の比較研究」が主催した公開オンライン・ワークショップ(共催:東欧史研究会、早稲田大学ナショナリズム・エスニシティ研究所)において、本研究課題でこれまで得られた知見を生かしてコメンテーターを務めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響で当初2月から3月にかけて予定していたハンガリー国立文書館とブダペシュト市立文書館での史料調査に赴くことができなかったため、研究計画の変更を余儀なくされたから。他方で、トリアノン条約調印100周年に合わせた研究論集・研究論文の刊行が現在進行形で相次いでおり、史料調査が進められない代わりに先行研究の調査を念入りに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は史料調査とそこで得られた史料を集中的に行う予定であった。しかし、COVID-19の影響で2021年度以降も短期での海外渡航が困難な状況は続くと思われる。本研究課題を進める上では史料調査が必須であり、この状況への対応策を考えることは非常に難しいが、オンラインで入手可能な文献で可能な限り研究課題を進め、海外渡航が再び可能となった時に直ちに調査に赴いて不足分を確認できるように進めたい。また、2020年に本研究課題とも関わるテーマの研究成果がハンガリーで相次いで刊行されたことについて、何らかの形で研究動向を整理して公表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張旅費として計上していた第10回国際中東欧研究協議会(ICCEES)モントリオール大会とハンガリーでの史料調査を行うことができなかったため、次年度使用が生じた。次年度に繰り越した科研費は、海外出張旅費に回すか、それが困難な場合は図書費に回す予定である。
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