研究課題/領域番号 |
20K13227
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
辻河 典子 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (50724738)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ハンガリー / 戦間期 / ナショナリズム / 第一次世界大戦 / 難民 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第一次世界大戦後にハンガリー領内に逃れた避難民が移住先で現地住民とどのように関わり合いながらハンガリー社会に統合されていったのかを明らかにすることである。 当初の研究計画では、本年度は史料調査とその分析を集中的に行い、その成果を取りまとめて学会発表や論文執筆を通じて公表する予定であった。本年度は所属機関の在外研究制度を利用してブダペシュトに滞在することができたため、ようやく史料調査を実施することができた。しかし、同市立文書館での調査では期待した成果を得ることができなかった。それでも避難民の流入や領土解体を経験した戦間期ハンガリーの国制を考察した成果を、研究発表および論文として公表することができた。 また、ブダペシュトに滞在したことで、本研究課題が対象とする避難民が住むようになった区域を訪れて現状を見学することができた。この区域は1950年以前はブダペシュト市域の外にあったが、1920年代初頭に住宅政策の一環として住宅地(団地)が整備され、避難してきたハンガリー語話者にもその一部が提供された。彼らが住むようになった区域には、今もトランシルヴァニアやスロヴァキアなど第一次世界大戦後に周辺国の領土となった地域の地名を冠した通りが並んでいる。他方で、この区域の住民には住環境の良さを求めてペシュトから移住した者たちもいたため、避難民はその者たちと共に団地とその住民として社会的に統合されることにもつながった。だが、トリアノン講和条約調印100周年(2020年)を控えた頃から、旧領からの避難民の存在を「発掘」・「再発見」して地域の歴史として記憶しようとする動きがあることも確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度にようやく現地での史料調査を実施することができたものの、ブダペシュト市立文書館での調査では期待した成果を得ることができなかった。また、2022年度の研究成果であった共著書が出版条件の変更に伴って最終的に刊行取り止め(学術雑誌の特別号に形を変えて2024年に刊行予定)となった。編集委員としてこの状況に対処する必要に迫られたため、研究に専念しづらい環境に置かれてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの史料調査の成果と比べると、反難民・移民政策を強める現在のハンガリーにおいて旧領からの避難民を改めて記憶しようとする多様な動きについての情報収集の方が成果が上がっており、避難民をめぐる歴史的記憶に研究の軸足を移すことも視野に入れて進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張旅費として計上していたハンガリーでの史料調査がコロナ禍の影響で予定よりも遅れているため、次年度使用が生じた。次年度に繰り越した科研費は史料調査のための海外出張旅費、あるいは研究に必要な図書の購入のための物品費として使用する予定である。
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