2022年度は、2020年から継続して行ってきた研究データの整理・分析作業を完了させた。 本研究では、弥生時代における内陸部と沿岸部の土器を用いた食を解明することを目的として進めてきた。内陸部では、2020年から奈良県唐古・鍵遺跡と同清水風遺跡を対象として分析を行ってきた。また沿岸部では、神奈川県池子遺跡や同間口洞穴遺跡などの相模湾沿岸部の遺跡を中心に調査を行い、さらに2022年度は静岡県登呂遺跡調査を加え、分析を行った。その結果、内陸部でも沿岸部でも、同じように魚とコメを中心とした土器による調理が行われていることが明らかになった。ただし、それぞれの出土動物骨の分析成果を参照すると、内陸部では淡水魚、沿岸部では海水魚を食している可能性が高いことが見えてきた。内陸部では、コメを作る水田を利用した水田漁撈なども示唆されたが、沿岸部では海浜部での漁撈活動が活発に行われていたと考えられた。このように、弥生社会においてコメと魚の食文化が浸透してたことを明らかにしたことで、本研究の目的は達成できたと考えられる。今後は、これまでの研究成果を踏まえ、和食の起源とも考えられる「コメと魚」の食文化について、他地域間比較や実験的な検証などを行い、精緻化していくことが重要である。 本研究で得られた成果は、国内外の学会やシンポジウムで発表した他、論文誌などを通じて随時発表を行った。また、これまでの調査成果の一部は、市町村が開催する考古学講座などを通じて調査協力機関や一般社会への還元をすることもできた。
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