研究課題/領域番号 |
20K13236
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
角道 亮介 駒澤大学, 文学部, 准教授 (00735227)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中国考古学 / 西周 / 青銅器 / 甲骨 / 動物犠牲 / 姚家ゲン遺跡 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、紀元前1000年紀初頭の中国・西周時代における王朝と周辺地域との間の政治的な関係性を、青銅器祭祀と甲骨祭祀の両面から検討することにある。西周時代、東方の諸侯国において青銅礼器を利用した王朝祭祀を共有させることは、西周王朝優位の政治的規範関係の維持につながる重要な政策であった。一方で、王朝の西方・北方の政治体に対してはこのような青銅器祭祀の共有は積極的におかなわれず、甲骨・動物犠牲を用いた祭祀の共有を西周王朝が目指した可能性がある。 本研究課題では、寧夏回族自治区姚家ゲン遺跡における西周王朝系の物質文化の抽出を行い、当該地域における王朝の実質的な影響力を検討するとともに、周辺の同時代遺跡から出土する青銅器・動物犠牲関連資料を網羅的に検討し、王朝西方での中央-地方関係を再検討することを試みる。西周時代の王朝の政治的な広がりを検討する際、これまでは王朝西方・西北方の社会との間の関係は資料の制約もあり論じられることが少なかった。新石器時代以来、当該地域には牛や羊などの動物を犠牲として大量に消費する社会が散発的に存在していた。西周王朝はこれらの地域との間の政治的安定を図り、前王朝である殷の甲骨祭祀を意図的に活用したことが想定されるのである。本研究の遂行によって、西周王朝による服装的な地域当地の在り方が明らかとなるであろう。 新型コロナウイルス感染症による現地への渡航制限のために、残念ながら現状では、既刊の報告書などを用いながら、甘粛省・寧夏回族自治区における西周期の青銅器資料の分布状況の集成にとどまっている。今後、現地での遺跡の踏査や博物館資料の実験を重ねながら、動物犠牲関連遺物の集成を中心に、引き続き資料の収集にあたる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症による中国への渡航制限のために、悉皆的な資料調査はなお達成できていない。現状では既往の報告書・概報への検討を中心に、甘粛省東部・寧回族自治区南部・陝西省西部での西周青銅器出土遺跡と動物祭祀遺跡の資料集成を行い、その分布状況の重なりを検討している最中である。 ただし、2023年3月より日本人による中国渡航の一部解禁が行われたため、2023年3月末~4月にかけて現地に赴き、資料調査と現地研究協力者との意見交換を行い、研究成果の取りまとめにむけて計画を進展させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
寧夏回族自治区の姚家ゲン遺跡や、2022年度に新たに開館した陝西省考古博物館に赴き、現地の研究協力者から新出資料の情報を得つつ、西周青銅礼器と甲骨祭祀を併用する「姚家ゲン類型文化」とも呼びうる考古学文化の分布範囲の解明に努める。 対象となる地域は甘粛省東部(涇河流域)から寧夏回族自治区南部にかけての一帯であり、当該地域内での西周青銅器利用と甲骨祭祀・動物犠牲利用の濃度差を検討する。この地域ではおそらく動物犠牲の利用が社会のなかで伝統的に行われており、甲骨祭祀もその延長上に位置付ける必要があるだろう。西周前期に周原遺跡で見られる西周甲骨も同様の文脈で理解する必要があり、今後は西周甲骨と殷墟甲骨の性格の違いへを理解するための重要な手掛かりになるものと思われる。具体的には、西周甲骨の内容と利用動物骨の分類、および利用形態・出土遺構の整理を行い、殷墟甲骨との比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国への渡航が2023年3月に一部解禁されたため、次年度中に中国へ渡航し新出資料の収集と現地の研究協力者との打ち合わせを行う予定である。 2023年3月26日~31日の期間に中国に赴き、徐天進(北京大学考古文博学院)・曹大志(北京大学考古文博学院)・種建栄(陝西省考古研究院)・宋江寧(中国社会科学院考古研究所)の各研究協力者と打ち合わせを持つ。同時に、陝西考古博物館(陝西省西安市)や周原博物館(陝西省扶風県)に赴き新出資料の収集に当たる。
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