研究課題/領域番号 |
20K13238
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
岩越 陽平 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任技師 (60815067)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 古墳時代 / 須恵器 / 陶質土器 / 日本 / 韓国 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、韓国から伝えられた技術によって生産が開始され、古墳時代の日本列島において生活用・儀礼用の土器として広く普及した焼き物である「須恵器」にみられる、意匠・器種組成などの様式的な変化や生産史上の画期の実態とその背景ついて、日本の古墳・集落遺跡などからの出土資料と韓国資料の対比による外的な要因からの検討、また、日本国内の須恵器の地域色、生産地間の交流のあり方など、国内の資料を中心とした検討の二つの視点から解明を目指している。 令和2年度はまず、日本でこれまでに1000点前後の資料が確認されている「装飾付須恵器・特殊須恵器」の資料状況を把握することから始めて、研究がやや停滞気味であった過去約20年の間に発掘調査等で日本・韓国で新しく確認された「装飾付須恵器・特殊須恵器」と、関連する資料のデータベース作成作業を行った。その結果、日本で出土した最近の資料については、概ね把握を終えることができた。韓国に存在する関連資料についても、文献探索が十分に行えなかったために未だ不十分な点が多いものの、集成作業を進めている途中である。 出張を伴う資料調査については、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、本研究に関連する資料が多く存在する韓国への渡航は勿論、国内での移動についても著しく制限されたが、感染防止対策を取りながら、所属機関のある奈良県や、その周辺の和歌山県・三重県などの自治体や、古墳時代の土器に関連する企画展示が開催された群馬県などへ出張を行い、資料熟覧・博物館展示見学・遺跡現地踏査等の調査を実施した。 特に、和歌山市岩橋千塚古墳群の出土資料の調査、奈良県内の古墳出土資料の調査などから、6世紀代の須恵器の地域色、地域間の情報共有のあり方などについての新たな知見を得ることができた。 これらの調査成果を元にした成果公表の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の遂行のための軸となる作業の一つである「装飾付須恵器・特殊須恵器」資料およびその関連資料のデータベース化の作業は、1000点以上におよぶ膨大な資料の確認作業に予定以上に時間が掛かってしまったため、成果公表に向けた資料分析の作業や文章化の作業が遅れている。 また、韓国資料の把握については、所属機関の所蔵する発掘調査報告書等の文献だけでは不足する部分もあり、周辺の大学図書館・他研究機関での文献探索、韓国現地での情報収集等の機会も必要であるが、新型コロナウイルスの感染拡大・蔓延を受けて、海外渡航・国内移動が制限されたことにより、文献探索の作業が滞っている。 また、同様の理由により、国内外での出張が大きく制限されたことで、実物資料を熟覧できる機会が減少しており、資料分析に必要不可欠な考古資料の特徴の正確な把握に支障をきたしている。特に、韓国に所在する資料の実見は困難で、全く行えていないが、国内の資料については、新型コロナウイルスの感染拡大の状況に注意して、機会をうかがいながら慎重に調査を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、令和2年度中に収集したデータを基にした成果公表の作業と、継続的な情報収集を併行して行っていく計画である。 日本と韓国の関連資料のデータベース化の作業については、令和3年度中に終えることを目標として、それと併行しながら、日本と韓国資料の比較検討作業、成果公表の準備を進めていく。 また、国内の資料を対象とした研究についても、資料状況の把握がある程度進んでおり、対象資料のいくつかは実見できていることから、今後は、論文化するに当たって不足している情報を補うことに重点を置きながら、成果公表の準備を進めていく予定である。 出張を含む研究活動については、新型コロナウイルスの蔓延によりしばらくは制限が必要な状況が続くと考えられるが、国内での調査については、感染防止のための適切な対応と調査先の機関等の意向も踏まえた上で、調査が可能と判断できる場合には、研究推進のために必要最低限の出張は行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた大きな理由として、新型コロナウイルスの感染拡大・蔓延を受けて、本研究課題の中で大きな比重を占める韓国資料の調査のための出張に加え、国内での移動も実質的に制限されたことで、旅費としての助成金の使用が滞ったということが挙げられる。 次年度の使用計画として、今後も当面の間は新型コロナウイルスの問題が継続すると考えられるため、出張の回数自体は大きく増やせないことが予想されるが、感染防止のための対策を十分にとった上で、必要最低限の出張は行っていく。また、今年度は膨大な数の資料を整理するために、アルバイト雇用の人件費・謝金を当初の想定より多く使用する必要があったが、未だ整理が不十分であるため、今後も人件費・謝金は同じ程度使用する見込みである。このほか、所属機関で不足している外国語図書の購入や、資料調査を本格化していくに伴いデジタルカメラ等の機器の購入等に物品費を充てる計画である。
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