研究課題/領域番号 |
20K13240
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
中野 咲 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任研究員 (00470279)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 古墳時代中・後期 / 土師器 / 外来系土器 / 韓式系土器 / 東日本系土器 / 手工業生産 / 地域間交流 |
研究実績の概要 |
古墳時代中・後期、畿内の王権は、畿内の内部領域に朝鮮半島から最新の手工業技術を移植し、窯業生産や鍛冶生産、馬匹生産など専業的な手工業生産拠点を運営した。地方勢力は、個別にこの生産拠点にアクセスし、最新技術を移入した。このような手工業生産拠点をめぐる地域間交流のうち、朝鮮半島→畿内や、畿内→地方の実態は、実証が進んでいるが、地方→畿内については不明な部分が多い。本研究では、畿内の手工業生産拠点出土の列島内外の外来系土器の系譜や出土の脈絡を検討し、手工業生産拠点が列島内外との活発な交流によって運営されていたことを明らかにし、畿内の王権による手工業生産拠点の経営戦略や地方勢 力の活動の実態に迫る。 このような研究目的のもと、2020年度は畿内に隣接する伊賀地域と伊勢・尾張地域の土器の比較研究を行う予定で、三重県下の資料調査と論文作成を進めてきた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、資料調査を断念せざる負えなくなり、作業は停滞している。 一方、畿内の土器に対しては、奈良県布留遺跡出土の韓式系土器である移動式カマドの未報告資料の整理や、奈良県十六面・薬王寺遺跡出土の古墳時代中期の土器の報告をおこなった。さらに、畿内の王権直営の牧と評価される蔀屋北遺跡の再検討プロジェクト(古代の馬研究会実施)に参加し、出土土器の分析を担当し、河内湖北岸の土器編年の作成と外来系土器の抽出を行った。加えて、中四国前方後円墳研究会オンラインシンポジウムに参加し、畿内の古墳中期土器編年と外来系土器と題した発表を行った。ここでは畿内の土器が周辺地域の影響を受けて成立していることを示し、古墳中期土器の研究においても、古式土師器研究のような系統の整理が必要であることを提唱した。 以上のように、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、研究は停滞しているものの、畿内の土器様相の整理と外来系土器の抽出に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、畿内隣接地域との土器編年の比較研究や関東地方の土器様相の把握を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、資料調査を断念せざる負えなくなり、作業は停滞している。代替措置として、畿内の土器様相の把握と外来系土器の抽出に努めた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は畿内隣接地域である三重県や兵庫県への資料調査を進め、伊賀や播磨の土器様相を把握し、畿内の土器様相の特質を抽出する。また、2020年度に再実測した長谷遺跡出土関東系土器や、長原遺跡出土東日本系土器の系譜の限定を主な目的として、関東地方の調査機関で在地土師器の資料調査を実施する予定である。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が完全になくなったとは言えず、今後は影響を見極めながら、関連機関と調整を図り、調査研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、遠方への資料調査が不可能となり、旅費が執行できなかったため。
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