研究課題/領域番号 |
20K13241
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
道上 祥武 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, アソシエイトフェロー (10827330)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 古代集落 / 構造分析 / 動態分析 / 建物群 / 建築尺度 / 農耕集落 / 生産集落 / 集落遺跡データベース |
研究実績の概要 |
今年度は①集落遺跡の追加集成作業②集落遺跡の具体的分析③成果の公表に関わる作業を並行して進めることができた。 集落遺跡の集成作業は畿内および近畿周辺地域を対象とし、2020年度までの調査事例を取り入れることができた。これらの成果については古代集落遺跡データベースとして成果を公表するための整理作業を随時進めている。 個々の集落遺跡の具体的な分析を進めた。ひとつは古墳時代から古代の鍛冶生産集落についての分析作業であり、大阪府柏原市の大県遺跡や大県南遺跡、田辺遺跡などについて、掘立柱建物のデータをまとめ、規模や構造を検討した。この成果は2020年10月に開催された大阪歴史学会2020年度10月例会(特別研究会)『大県遺跡と古代の鍛冶生産を考える』内のミニシンポジウム内で一部反映されており、研究会の内容は『ヒストリア』284号(大阪歴史学会、2021年)で公表されている。 古代の建築尺度に関する分析作業も進めることができた。大阪府法円坂遺跡の大型掘立柱建物をはじめ、古墳時代から古代の大型倉庫、居館遺構の建築に用いられた尺度の抽出作業を進めた。本分析作業の成果は、学術論文として投稿中である。 古代集落の具体的構造とその変遷の解明に関する分析作業を進めることができた。古代集落研究に関する学史を整理し、古代集落の構造と変遷を解明していく上での分析視点を明確化した。さらに、大和・河内地域の集落遺跡をモデルケースの一つとして具体的な集落構造の分析をおこなった。本成果については第24回古代官衙・集落研究集会「古代集落の構造と変遷」(古代集落を考える1)で口頭発表をおこなっており、『古代集落の構造と変遷1』(古代官衙・集落研究集会、2021年)で正報告として刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、今年度は研究環境の整備や研究アシスタントの雇用による作業の進捗に注力した。研究アシスタントについては新型コロナウィルス(COVID-19)の蔓延拡大を受けて、当初予定よりもやや遅れた8月から1人を採用することとなったが、畿内地域の集落遺跡の追加集成をほぼ完了することができた。その後、1月からはもう1人アシスタントを雇用することができた。今年度は最終的には2人のアシスタントを確保できたことが大きく、集落遺跡の集成作業、各種分析作業や成果の公表作業をそれぞれ順調に進めることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
集落遺跡の集成作業は2020年度で一旦完了とし、これまでに収集した集落遺跡の集成データをデータベース化するための作業を進める。その一方で、具体的な集落遺跡の分析作業は引き続きおこなっていく。 2020年度の成果を踏まえ、2021年度も研究アシスタントを2人雇用する予定である。新型コロナウィルス(COVID-19)の蔓延拡大の影響から、2021年度についても積極的な調査・フィールドワークは困難であることが予想されるため、アシスタントの出勤を昨年度よりも多い週2日程度のペースとし、集落遺跡の分析作業の補助、データベース作成補助の作業に注力してもらう。ただし、各地の教育委員会や埋蔵文化財センターに所蔵されている遺跡の図面を検討する必要があるため、最低限の出張はおこなうこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定では年度当初から研究アシスタントを2人雇用し、それぞれが勤務にあたる予定であったが、実際にはその人員確保に手間取り、8月から1人を採用し、1月から2人体制となった。週1~2日勤務を基本としたものの、実際には週1日あるいは勤務ができない時期もあったため、当初予定していた予算は十分に執行することができなかった。また、今年度はCOVID-19の感染拡大を受け、出張や資料調査を十分におこなうことができなかった。来年度は年度の早い段階から人員確保につとめ、研究アシスタントの雇用およびその環境整備に予算を執行していく予定である。
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