研究課題/領域番号 |
20K13241
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
道上 祥武 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, アソシエイトフェロー (10827330)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 集落遺跡 / 構造分析 / 動態分析 / 尺度 / 古墳時代から古代へ |
研究実績の概要 |
今年度は①集落遺跡データベースの整理作業②古代集落の具体的分析③成果の公表に関わる作業を並行して進めた。 集成作業は2020年度を以て一旦完了とし、その整理作業を進めている。具体的には集落消長表の作成と集落分布変遷図の作成である。 集落遺跡に関する具体的な分析作業を進めた。第24回古代官衙・集落研究集会「古代集落の構造と変遷」(古代集落を考える1)では、奈良県内において古墳時代から古代まで継続して営まれる集落遺跡の構造と変遷を示し、それらが伝統的集団として継続・発展し、8世紀には地域の中心的集団となる過程を論じた。また、7世紀の中で新たに成立し、8世紀に発展していく建物群について、官衙としての性格を想定した。地域の伝統的集団と末端官衙が併存するあり方は古代の地域社会のあり方を示しているものとみられる(道上祥武2021「古代集落の諸類型‐古代集落研究の現状と方向性‐」『古代集落の構造と変遷1』奈良文化財研究所)。 古代の建築尺度に関する分析作業も進めた。大阪府法円坂遺跡や蛍池東遺跡、和歌山県鳴滝遺跡など古墳時代の大型掘立柱建物から、奈良県上之宮遺跡、大阪府遠里小野遺跡など古代の大型掘立柱建物に用いられた尺度を検討した。その結果、5世紀前半代の建物には漢尺由来の尺度(1尺0.233m前後)が用いられたこと、5世紀後半以降は南朝由来の尺度(0.256~0.260m前後)に転換し、7世紀中頃まで継続的に使用されること、唐尺(0.291~0.296m前後、令小尺)は7世紀中頃以降、8世紀前半にいたるまで段階的に普及していくことを論じた(道上祥武2022「建築遺構からみた古墳時代から古代の尺度の変遷」『古代学研究』231、古代学研究会)。 また、これまでの研究成果をまとめた書籍の出版に係る作業を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究環境の整備や研究アシスタントの雇用による作業の進捗に注力した。研究アシスタントについては基本的に二人体制を維持することができたため、集落遺跡データベースの整理作業および書籍出版に係る作業を進めることができた。 また、データベースの整理作業が進んだこともあり、成果の公表作業も順調に進めることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は昨年度に引き続き、これまでに集めた集成データ、分析データの公表に係る作業を中心に進めていく。これは昨年度までと同様、研究アシスタントによる作業が中心となる。アシスタントの出勤は可能な限り週2日程度のペースとし、集落遺跡データベースの整理、分析作業の補助、出版に係る作業に注力してもらう。 また、2022年度は昨年度よりも調査・フィールドワークを積極的におこないたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は研究アシスタントの雇用を中心に予算の編成をおこなった。当初は研究アシスタント2名週2日程度を予定していたが、結果的には2名週1日となったため、必要経費の変化が生じることとなった。 また、予定していた出張が新型コロナウィルスまん延の影響を受けて、中止となったことも影響している。 2022年度は改めて研究アシスタント2名週2日程度の雇用を想定し、なおかつ出張なども積極的に実施する予定である。
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