研究課題
考古学及び文化財科学の分野において、遺跡から出土するヒトの骨や歯は、先史時代の社会的・文化的側面と自然人類学的な関わりを明らかにしていく上で、極めて重要な試料である。骨や歯の中の炭素14からは年代を、炭素・窒素同位体比からは当時の人の食性を、DNA解析からは民族の系統や伝播などの情報を得ることができる。本研究では、その出生及び死亡年代が判明している現代のヒトの骨と歯の試料に対して、加速器質量分析と元素分析型同位体比質量分析を行い、得られた放射性炭素年代と食性モデルの依存性を調べた。ヒトの歯試料は、下顎第一小臼歯の歯冠部を切断し、半分はエナメル質を単離し、もう一方は歯冠部全体を使用した。骨試料は抽出したコラーゲンを使用した。各試料は元素分析装置で燃焼し、90%のCO2ガスを専用ガラスラインで自動回収し、鉄を触媒とした水素還元反応によってグラファイトを精製した。残りの10%のガスを質量分析計に送り、炭素・窒素安定同位体比の測定を行った。グラファイトは山形大学の高感度加速器質量分析装置を用いて放射性炭素年代測定を行った。下顎第一小臼歯のエナメル質と歯冠部全体の測定により得られた結果は、検体の生年に歯の形成期間を足した予想値に良い一致を示し、Journal of Forensic and Legal Medicineに掲載された。骨のコラーゲン試料を測定した結果については、個体数を増やした後で、すみやかに成果を公表する予定である。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
巻: 552 ページ: 165353~165353
10.1016/j.nimb.2024.165353
Journal of Forensic and Legal Medicine
巻: 100 ページ: 102607~102607
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