研究課題/領域番号 |
20K13246
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
松原 亜実 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 専門研究員 (20808232)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 藍 / ジャパンブルー / インディゴ / 顔料 / 染料 / 天然染料 / インジゴ |
研究実績の概要 |
令和5年度では古い文献にみられる藍蝋、藍蝋生の作製試験を行った。飴出し法抽出試験は令和3年度に行っているので、藍建の藍華作製を実地した。 発酵藍建 すくも 500g 木灰250g 清酒100ml ブドウ糖50g 石灰200g 熱湯 20l すくも 500gに2l水を入れ1時間ほど静置する。木灰、石灰などを加えて10分間ほど撹拌する。そこに残りの石灰、熱湯20lを加え混ぜ続け全体が馴染んだら清酒、ブドウ糖を加え10日間静置する。1日に30分ほど攪拌し空気に触れさせる。しかし発酵を促すには液体の温度を25℃から28℃に保ち続ける必要があり、発酵が十分に進まず藍の華を精製するまでに至らなかった。 化学藍建 すくも 500g 還元剤(藍熊染料) 230g 熱湯2l 水18l すくも 500gに2lの水を入れ1時間ほど置換し、細かくほぐした後に不純物を取り除き上澄み液を捨て、計量した還元剤230gと熱湯2lを加えて10分ほど撹拌する。この時の水は茶色である。この後さらに1時間ほど置換する。その後水16lを投入し、10分ほど撹拌すると泡立ちが起きる。撹拌を続けると泡が酸素に触れ青く変色し藍の色味を帯びていく。表面全体を藍の泡が覆うようになったら蓋をして2日間静置する。2日間おくとやや紫味を帯びた藍色となり、藍華の完成である。浮かんでいる華の部分だけを皿に取り、酢を加えて中和させる。この時、茶色異溶液が混ざると藍の彩度が落ちるため、泡のみを抽出する必要がある。 所見 藍華は泡のみを取り分けても微量の茶色い水分が混ざるため、水にさらし除去を試みたがやや濁りが見られる。中和剤に酢を用いるため臭いとベタつきが課題である。色材として安定した量の抽出には化学建ての方が適しているが、すくも 500gで取れる藍華は大皿2皿分であり、抽出効率はあまり良いとは言えない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は藍が色材に用いられている江戸絵画の科学調査を行う予定であったが、前年度よりのCOVID-19の影響で大学美術館を含む他美術館での調査が延期となった。抽出試験の実施の予定もずれ込んだため「やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は藍華の顔料抽出の生成方法を検討し、より純度の高い抽出意見を実施する。沈殿藍の組成や技法の置き換え再現試験を行い、より質の高い藍の抽出を試みる。また集積した沈殿藍を濾過し、顔料としての最適化を試みる。 同時に藍を用いて江戸時代に描かれた肉筆画(紙本・絹本に描かれた絵画)、及び浮世絵版画の色材調査を行う。藍は褪色が起こるため、作品調査は藍が認識できる江戸時代の作品に限定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2024年度はそれまでに行った抽出試験の精度を高め、染料としての褪色実験を行う。また作品調査を同時に進めていく。
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