研究課題/領域番号 |
20K13258
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
Doan QuangVan 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (80869264)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱帯気候 / 対流性降水 / 都市降水 / 都市気候変動 |
研究実績の概要 |
2020年度は、 熱帯地域における対流性降水への都市影響のメカニズムを中心に研究し、その成果を論文として発表した。2020年度の経費は、主に上記の研究を遂行するためのコンピューターの購入費に充てられた。
1. 熱帯地域での対流性降水に対する都市効果についての論文は 気象分野のメジャー学術論文誌である英国王立気象学会Quarterly Journal誌第147号に掲載された。この論文では、シンガポール気候研究所とイギリス気象局(Met Office)と共同で、シンガポールの都市域がどのように対流性降水へ影響を及ぼすか、超高解像度(300mメッシュ)天気予報システムを用いて、明らかにした。 本論文の結果の独自性は、対流性降水の支配的な熱帯地域では、都市の影響が他の気候帯地域より強いことを明らかにした点である。具体的に、例えばシンガポールの場合、ピーク時の総降水量の20~30%が都市効果によるものであることがわかった。さらに、本研究は、シンガポール都市域での降水量増加のメカニズムを明らかにした。主なメカニズムとして、都市ヒートアイランド現象による対流の活発化、摩擦収束の増加、強まる海風による境界層水分の流入の増加、海風前線の海側への移動などを示した。なお、この研究を遂行するにあたって、 補助金を用いてコンピューターを購入した。
2. 熱帯地域での将来地球温暖化は、如何に都市降水へ影響を及ぼすかを明らかにするために、擬似温暖の力学的ダウンスケーリングのアプローチを用いて、シンガポールの都市降水を対象にし、予測実験を行った。熱帯気候の特徴をより明確にする目的で、比較対象として、同様に東京を対象する計算も行った。より高温高湿である将来大気では、ローカルスケールで発生する都市対流性降水は如何に応答・変化するのかということについて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外共同研究者(特にシンガポール気候研究所とイギリス王立気象局Met Office)の協力のおかげで、現地シンガポールの気象データ等を早期段階で集めることができた。そのデータを活かして、シンガポールでの都市降水の変化の分析や数値モデルの検証等に早めに取り組むことができた。最初の結果は気象分野の英国王立気象学会Quarterly Journal誌第147号に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度中は、熱帯地域での将来地球温暖化が、如何に都市降水へ影響を及ぼすかという問いに答えるべく、研究を進める。そして、研究成果を早い段階でまとめて、論文化し発表する。 また、熱帯都市降水というテーマに取り組んでいるので、シンガポールを対象とする研究で得られた結果にロバスト性があるかどうかは、他の地域で検討する必要があると考えている。なので、東南アジアの他の都市(できるだけ気候帯が違う都市)またはインド大陸の都市に着目し、研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、COVID-19による移動制限のため、旅費を使えなくなり残額が生じた。 今年度は、数値計算データの処理・解析等に膨大な手間が必要となるので、データ処理・解析補助の雇用に使いたい。そして、データ解析用のコンピューターとデータの保存のためにハードディスクを購入する必要がある。
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