本研究の目的であった(a)多様なデータから(b)多様な効果を推定するための時空間回帰手法の開発と、フリーの統計ソフトウェアRパッケージへの実装を行った。 (a)に関しては、ガウス分布を仮定する通常の空間回帰モデルを幅広い確率分布に従うデータに応用するために、被説明変数を繰り返し変換する新たな手法を確立した。同手法は空間回帰モデルと各層のノード数が1つのニューラルネットワークを組み合わせたモデルとみなすことができ新規的である。また、同手法を用いることで、例えばBox-Cox分布、対数正規分布、Tukey g-and-h分布を含む幅広い分布に従う被説明変数を、明示的な分布の仮定なしにモデリングできることを確認した。また、上記の変換関数を拡張することで、幅広い分布に従うカウントデータへの応用も可能とした。比較分析により、同手法の精度と計算効率が既存手法に勝ることを確認した。 (b)に関しては、それまで研究対象としてきた空間相関パターンだけでなく、時間帯や曜日、季節といった複数の時系列上のパターンや時空間の相互パターンなどを同時に考慮可能な時空間回帰手法を新たに開発した。同手法では、機械学習手法reluctant interaction modelingの応用により、計算効率を維持しながら安定的に時空間モデルを推定・選択することに成功している。 以上で開発した手法を、住宅地価、犯罪件数、Covid-19の陽性者数を含む幅広いデータに応用してその有用性を確認した。
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