研究課題/領域番号 |
20K13263
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石井 祐次 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (60831477)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 河成段丘 / 光ルミネッセンス年代測定 / 最終氷期 / 更新世 |
研究実績の概要 |
本研究は堆積性の河成段丘の堆積物に光ルミネッセンス年代測定を適用することで,河成段丘の形成過程をこれまでよりも詳細に解明することを目的としている.前年度は,鷹巣盆地にみられる最終氷期の河成段丘の調査をおこない,層厚10mの河成段丘堆積物から成る露頭から8点の試料を採取し,infrared-stimulated luminescence(IRSL)50年代およびpost-IR IRSL50/150年代を測定した.本年度はそれらの試料について,pulsed IRSL年代測定をおこない,前年度に測定したIRSL50年代およびpost-IR IRSL50/150年代と比較した. いくつかのサンプルについて,フェーディング補正後のIRSL50年代はフェーディング補正後のpost-IR IRSL50/150年代と一致しており,フェーディング補正が上手く働いていると考えられる.その他のサンプルではフェーディング補正後のpost-IR IRLS50/150年代は堆積前の露光が不十分であり,堆積年代を過大評価している.pulsed IR信号はルミネッセンス信号が飽和状態に近く,フェーディング補正後の年代のばらつきが大きい.フェーディング補正後のIRSL50年代にもとづく年代―深度モデルから,105-90 kaおよび75-60 kaに急速な堆積が生じたことが示唆される.これらの時期は,夏季モンスーンの強度が弱化して降水量が低下した時期および気温が低下した時期と一致する.本研究の結果は,日本にみられる最終氷期の河成段丘の形成過程が数万年スケールの気候変動に応答して形成されたことを示唆している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は新型コロナウイルスの影響で現地調査をおこなうことができなかったため,現段階で鷹巣盆地における研究のみとなっている.当初の計画では2つの地域において研究をおこなう予定であるものの,現段階で1地域のみにおける成果しか得られていないという点においては,やや遅れている.一方で,鷹巣盆地における研究はすでに国際誌に成果が公表されているという点においては,本課題が順調に進んでいると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は十勝沿岸にみられる最終氷期の河成段丘を対象として調査をおこなう予定である.十勝沿岸では楽古川などの河成段丘堆積物が沿岸に広く露出しており,河成段丘堆積物の下端から上端まで試料を高解像度で採取することができると期待される.当地域における河成段丘堆積物の堆積年代を明らかにし,鷹巣盆地との比較をおこない,気候変動に対する河川の応答の共通性・違いについて検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルスの影響で現地調査をおこなうことができなかったため,次年度使用額が生じた.翌年度の現地調査や試料分析の外注費用に充てる予定である.
|