研究課題/領域番号 |
20K13265
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
申 知燕 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助教 (90866716)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 移住 / トランスナショナリズム / エスニシティ / アジア系移住者 / 教育行動 / アメリカ |
研究実績の概要 |
今年度は、主に文献資料を用いて、アメリカ移民政策の変遷を整理した上で、アメリカの移民政策が韓人および日本人移住者の増減にどのような影響を与えてきたかについて把握した。また、受入国としてのアメリカの制度だけでなく、送出国となる日本および韓国の社会的・経済的状況の変化にも注目した。とくに、送出国が経済成長や社会的変化を経験することが、移住者数や移住者の属性に影響を及ぼすとの仮定をもとに、日韓両国における社会情勢や移住のプッシュ要因を把握した。その結果、日韓両国からの移住者は、アメリカの移民政策はもちろん、自国の経済成長段階にも大きく影響されることが明らかになった。経済成長が進むことで、海外出国に関する規制が緩和され、自由に国際移住を行うことができる上に、移住者自身の学歴や、職業の専門性、そして日々の生活環境も向上する。そのため、移住の目的も、先進国での出稼ぎや永住から、中長期滞在を通じたトランスナショナルなキャリア形成へと、質的に変化してきたのである。 以上の結果をもとに、年度末からは、韓人および日本人のトランスナショナルな移住者層をより具体化することを試みており、移住後の分布や生活行動に関する先行研究の整理を進めている。また、人口センサスおよび各種データを用いて、かれらの移住後の分布や属性、生活様式などを間接的に把握するための分析も進めている。その他、次年度以降の現地調査に向けて、調査先の選定、および調査先に関連する文献研究も進めている。 さらに、日韓出身からアメリカに向かった移住者と、同時期に韓国からアメリカではなく日本に向かった移住者を比較することも試みており、そのために、国内での現地調査に向けた先行研究の整理も行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19による水際対策が強化されたため、当初予定していた海外調査に遅れが出ている。ただし、日本国内でできる研究として、現地調査の代わりに文献調査を行なったため、研究自体は進んでいると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、できる限りアメリカでの現地調査を行う予定である。まず、ニューヨーク市において現地調査を始めつつ、他の地域における調査先も絞り込み、次年度以降の調査に備える予定である。 もし、次年度もCOVID-19の影響で海外での現地調査が行えない場合は、引き続き文献調査やセンサスデータの分析を行いつつ、送り出し地域としての日本にも注目し、アメリカと日本を行き来し、現在は国内に居住しているトランスナショナルな移住者、およびアメリカの日本人向け教育施設と関連のある国内の各機関に対して聞き取り調査を行う予定である。また、アメリカにおける日韓出身者との比較対象として、日本国内に居住する韓国出身の移住者および韓国子弟向けの教育機関においても聞き取り調査を行い、当初の研究計画をより拡張させた比較研究を行う可能性もある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
・COVID-19により、現地調査の実施を延期したため。 ・当初の予定より物品費およびその他の費用が節約できたため。
|