研究課題/領域番号 |
20K13267
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉江 あい 名古屋大学, 高等研究院(環境学), 特任助教 (10786023)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | イスラーム主義 / イスラーム復興 / サラフ主義 / 移民 / 出稼ぎ / 巡礼 / バングラデシュ / サウディアラビア |
研究実績の概要 |
本年度も2020年と同様、サウディアラビア政府が国外からの巡礼(ハッジ)参加を認めなかった。バングラデシュでは7月から8月、1月から2月にかけて1日の感染者数が1万人を超える日が続いた。そのため、本年度も両国でのフィールドワークの実施は断念せざるを得ず、成果発表と文献調査をおこなった。 本年度は34th International Geographical CongressにてThe transnational Islamic network between rural Bangladesh and the Middle East: focusing on Bangladeshi migrant workers and returneesという題目で口頭発表をおこなった。バングラデシュ人移民・出稼ぎ者の多様性について質問があり、出稼ぎ者は単身男性が圧倒的多数で(本発表のもととなる調査をおこなった時点において、バングラデシュからの海外出稼ぎ者全体の99%は男性)移民は家族を伴う形が多いと思われることを回答した。また、所属先である高等研究院において本研究に関する発表を行い、質疑にて近代のキリスト教プロテスタンティズムが資本主義の発達と結びついたのに対して、現在のイスラーム主義や武装勢力の闘争が反資本主義の運動としても捉えられることを議論した。 文献調査では、イブン・タイミーヤやアフガーニーなど、サラフ主義の源流となる法学者や思想家の思想や運動が、後世(特にエジプトのムスリム同胞団)にどのように伝わり、時代背景とともにその性格がどのように変容したのかをたどった。その中で、中東のサラフ主義と南アジアのデーオバンド、アフレ・ハディースなどの改革思想の共通点と相違点を抽出した。また、「ジハード主義」といった用語の妥当性やポストイスラーム主義に関する議論に見られる課題について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の推進にはフィールドワーク(具体的には、マッカに居住するバングラデシュ移民の世帯調査)が不可欠である。しかし、本年度も新型コロナウィルスの流行により、サウディアラビアおよびバングラデシュにおいてフィールドワークを実施することができなかった(研究実績の概要に記載した通り、本年度も昨年度に引き続き、サウディアラビアでは国外からの巡礼(ハッジ)への参加を認めなかった。バングラデシュでは7月から8月、1月から2月にかけて1日の感染者数が1万人を超える日が続いた)。 サウディアラビアでは現地機関などに調査を委託することも検討していたが、これまで何度もフィールドワークを行い、現地研究者とのネットワークを持っているバングラデシュとは異なり、適当な委託先を見つけることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
感染状況と各国の水際対策を勘案して、可能であればサウディアラビアおよびバングラデシュにおいてフィールドワークを行う。 それが難しい場合は、サウディアラビアでの現地調査委託も難しいため、バングラデシュでの委託調査を実施する。具体的には、バングラデシュジャハンギルノゴル大学の文化人類学者の協力を得て、アリア・マドラサおよびデーオバンド系、アフレハディース系、バレルヴィー系などのコウミ・マドラサ(男子校、女子校)、モクトブ(アラビア語、クルアーンを習う未就学児向けの学習所)の関係者やそれらに通う子どもたちの保護者に対するインタビュー調査を実施する。具体的な質問内容については、こちらでまず英語で作成したものを研究協力者に渡し、ベンガル語翻訳されたものを返送してもらう。研究協力者と議論しながら最終的な内容を決定し、実際のインタビュー調査にはできるかぎりオンラインにて同席する。 文献調査の成果を研究会にて発表したり、論文にまとめたりする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度もサウディアラビアとバングラデシュにおけるフィールドワークを実施できず、またサウディアラビアにて現地調査を委託できる適当な機関も見つけることができなかったため、旅費、人件費・謝金の使用額が0円となり、次年度使用額が生じた。
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