本研究では、ICT(情報通信技術)を用いた創造的活動に焦点をあて、地域にかかわるさまざまな主体について調査を行ってきた。2020年度は企業の創造的活動をとりあげ、地方における創造的人材の確保とICTが果たす役割について検討した。2021~2022年度には、創造的活動の内容に注目し、テレワークとその業務内容の関係について調査した。最終年度である2023年度は、2022年度調査で不足していた、創造的人材を求める企業の立地場所の地理的特徴を明らかにした。また、コロナ禍で実施できていなかった、地域住民の創造的活動に対する調査を行った。 企業活動については、高知県を事例にサテライトオフィスの立地とその人材獲得、地方企業のテレワークを通じた人材獲得の動向を明らかにした。最終年度には、これまでのケーススタディだけでなく、全国的な動向として、テレワーク可能な創造的人材を求める企業の立地場所の特徴を分析した。その結果、全国的なスケールでみれば、管理的職業従事者などの人材の割合の小さい地域においてテレワークによる創造的人材を求める動きが確認できた。一方で、よりミクロな都道府県スケールでみると、県庁所在地など相対的に人材の豊富な地域での需要が大きいことが明らかになった。 住民活動については、コロナ禍の影響もあって十分に実施できなかったものの、2023年度に、ボランタリー地理情報などを用いた地域づくりの可能性を示すことができた。具体的には、高知県幡多地域を事例に、同地域に訪れる観光客がソーシャルメディアに共有した各種データを用いて可視化するとともに、地域づくりにかかわる地域住民へのインタビュー調査を行った。その結果、観光客と地域住民の間に選好の違いがみられた。ICTを活用することで、地域内だけでなく旅行者などの地域外の関係者のもつ情報や知識をすり合わせ、地域づくりに活用できる可能性が示された。
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