研究課題/領域番号 |
20K13273
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐藤 弘隆 立命館大学, 文学部, 助教 (50844114)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 祭礼の継承 / 地理学評論 / デジタル・ミュージアム / 京都祇園祭の山鉾行事 / 犬山祭 / 城端曳山祭 |
研究実績の概要 |
本研究は、近現代都市における「祭礼の存立基盤」の再構築や「祭礼の社会空間」の創出のプロセスを都市の空間構造の変容と共に解明する都市社会地理学的アプローチを用い、その意思決定に関わる基準・論理の転換を「祭礼存続のストラテジー」という複数のモデルとして提示していく。事例研究においては、対象とする京都・犬山・城端の3つの歴史的都市の空間構造の現状やそこに至る変遷を復原する。そして、それによる制約を受けながら、各都市の祭礼に関わる複数の社会集団がそれぞれの役割や関係性、人員・資金・場所の確保をいかなる基準・論理で変化させているのかを明らかにし、都市間の比較を行う。 京都祇園祭の山鉾行事(京都府京都市)を事例とした研究では、明治前期の復興期、大正・昭和初期の安定期、戦中・占領期の低迷期に分け、近代山鉾町の住まいと仕事場に注目し、その空間構造を通時的に復原していく。そして、その変遷に伴う山鉾行事の存立基盤や社会空間の再構築・創出のプロセスを明らかにする。この分析には、近代京都の歴史GISや地域資料のアーカイブデータが必要となり、地域資料のデジタルアーカイブを進める。 犬山祭(愛知県犬山市) を事例とした研究では、高度成長期における本町通を中心とした商店街の最盛期、平成不況時の衰退期、2000年代の再生期と時代を設定し、旧城下町の空間構造の変遷をGIS上に復原する。そして、本町通沿いやそれ以外の各自治会や犬山祭保存会が祭礼の存立構造や社会空間をいかに再構築・創出してきたかを明らかにする。 城端曳山祭(富山県南砺市)を事例とする研究では、国道の拡幅により城端の空間構造が大きく変容する1995年前後において、祭礼を担う複数の社会集団がその空間的制約を受けながら、祭礼の存立構造や社会空間をいかに再構築・創出してきたのかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は新型コロナウイルスの流行のため、調査を予定していた山・鉾・屋台行事はすべて中止・縮小された。それによって祭礼の現地調査及び関係者の訪問はできなかった。しかし、犬山や城端の祭礼関係とはオンラインにおいて、コロナを受けての対応や今後の調査について相談を続けた。 現地での調査ができなかった本年の主な活動は、文献調査とデータ整備を中心に行った。とりわけ、京都祇園祭については、以前から蓄積していた膨大な研究成果があったので、古文書や古写真のアーカイブデータや都市と祭礼に関わるGISデータを整理し、「祇園祭デジタル・ミュージアム2020-祇園祭の過去・現在・未来-」というWEBサイトを構築・公開した。そして、その解説や活用事例の論文を発表した。 また、整理したアーカイブデータとGISデータを用いて、明治前・中期の京都祇園祭の山鉾行事を事例とした論文を執筆した,都市-祭礼の関係性を地理学的アプローチによって解釈することで、都市の社会空間の変容に連動させた山鉾行事の存立基盤の再構築のプロセスを明らかにし、近代移行期の山鉾行事の存続要因を考察した.これによって,都市-祭礼への地理学的アプローチの有効性が示され、祭礼の継承に資する知見が得られた.本論文は現在査読を受けて、修正を進めている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も対象とする祭礼の中止・縮小が決定しており、予定していた犬山と城端の調査は困難だと思われる。引き続き関係者との連絡を密にし、当面の研究の方針を固め、可能な限り必要なデータを集めたい。 祇園祭については、デジタル・ミュージアムのデータを用いて、大正・昭和初期の安定期、戦中・占領期の山鉾行事や神幸行列を対象とした研究を進め、成果を発信していく予定である。年度末にはその成果をまとめた書籍を発刊する予定で進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、予定していた調査出張がほとんどできなかったことと、学生アルバイトの雇用も最小限にとどめたため。次年度は状況が改善していけば、必要な対策を講じたうえで出張やアルバイトの雇用を積極的に行いたい。
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