研究課題/領域番号 |
20K13273
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐藤 弘隆 立命館大学, 文学部, 助教 (50844114)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 祭礼の継承 / 地理学 / デジタル・ミュージアム / 京都祇園祭の山鉾行事 / 犬山祭 / 城端曳山祭 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、近現代都市における山・鉾・屋台などを出す祭礼の存立基盤の再構築のプロセスを、社会空間概念を用いて地理学的に明らかにし、得られた複数の事例を「祭礼存続のストラテジー」として提示していくものである。 2021年度は、前年度の構築・公開した「祇園祭デジタル・ミュージアム」のサイトリニューアルとアーカイブデータの追加作業を行った。また収集したアーカイブデータを活用して、明治時代初期から大正時代後期の京都市都心における屋敷所有の入れ替わりと、それに伴う祇園祭山鉾行事の運営方法への影響について詳細な分析を行った。その成果はシンポジウムでの報告や論文として公開した。これによって、近代祭礼として大きく転換する祇園祭の山鉾行事の存続のプロセスや戦略を明らかにした。 京都祇園祭のほか、周辺地域の類似する山鉾の祭礼である亀岡祭や大津祭、他地方の犬山祭や城端曳山祭など曳山祭礼を対象に、コロナ禍における行事実施をめぐる諸問題・課題についても情報収集を行い、それぞれの対応に現れる祭礼の意義や存立構造、継承への考え方を把握した。そして京都祇園祭については、新型コロナウイルスの流行を始めとする厄災との対峙について、その調査の途中経過を一部口頭で報告し、論文執筆も進めている。 犬山祭の調査においては、犬山祭保存会事務局との意見交換を複数重ねることで、次年度からの本格調査の実施の目途が立ち、調査・研究体制を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度も前年度に引き続き、新型コロナウイルスの流行の影響を受けて、国内のほとんどの祭礼は縮小・中止を余儀なくされた。それによって、現地での祭礼の観察や聞き取り調査、資料収集など、当初計画していたようなフィールドワークは、2年連続で叶わなかった。そのため予定を変更して、研究代表者の勤務地・住所から近い、京都祇園祭に加えて、県境を越えた移動を伴わない亀岡祭の調査を重点的に行った。犬山祭に関しては状況を見つつ、本年度末から現地での調査を少しずつ再開できた。長距離の移動を伴う城端については、これまでの研究期間中に一度も訪問できておらず、関係者との連絡と文献調査のみにとどまっており、大幅な計画の見直しを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題最終年度である2022年度も、犬山祭と城端曳山祭は、残念ながら縮小開催が決定され、研究期間中に完全な形の祭礼を調査することは叶わない。ただし、犬山祭に関しては、必要な情報が集まりつつあり、次年度中に、何らかの形で成果を報告していく予定である。城端曳山祭については、祭り期間を避けて地元へ赴き、ここ3年間の対応について関係者へ聞き取りを行う。また祇園祭に関しては、現在のところほぼ完全な形で山鉾行事を行うことを発表しており、コロナ禍の対応を含め、近現代における山鉾行事の継承に関する研究を総括するような成果を出していくことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行の影響で、予定していた出張やアルバイトの人員確保ができなかったため。これまで実施できなかった分、出張やアルバイトの雇用を増やして使用していく。
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