| 研究課題/領域番号 |
20K13276
|
|---|
| 研究機関 | 北海道大学 |
|---|
研究代表者 |
田本 はる菜 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 特任助教 (20823800)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
| キーワード | 先住民 / クラフト / 台湾原住民族 / オーサーシップ / 東アジア / エスニック ・マーケティング / 文化産業 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究は、今日の先住民工芸において技能や作品の帰属を定めるオーサーシップがどのように形づくられているのかを、台湾原住民族の服飾品の制作・流通を事例に明らかにするものである。制作・流通のネットワークが広がる近隣諸外国までを対象とした民族誌的調査を行い、その成果をオーサーシップをめぐる理論研究と接合させることで、工芸・芸術の関係的理解を拡張する枠組みを構築することが、本研究の目的である。
前年度に引き続き２０２１年度も、民族誌記述と分析のための基本的な文献研究を行い、これまで収集した現地調査データの整理を行った。本年度の主要な成果は、本研究の成果を一部盛り込んだ単著（『山地のポスト・トライバルアート 台湾原住民セデックと技術復興の民族誌』北海道大学出版会、２０２１年５月）の刊行である。本書は台湾原住民セデックの人々の織物をはじめとする技術的実践の今日的動態を対象にしたものであり、本研究の課題でもある、手工芸生産のエスニシティをこえたネットワークについても取り上げ、既存研究の視点を批判的に検討している。このほか、１９６０年代以降の台湾原住民族の織布の紋様変化を取り上げ、技術環境の変化に対する原住民族の人々の独自の解釈や対応について検討を進め、この内容を国際学会および国内学会において報告することができた。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、今日の先住民の工芸実践において、技能や作品の帰属を定めるオーサーシップのあり方が、いかに変容もしくは多元化しているのかを、台湾原住民族の服飾生産・流通を中心に明らかにするものである。具体的には、①原住民の手工芸環境の変化と政策的背景の解明、②織物制作と流通についてのフィールド ワーク、③民族誌記述と分析概念の構築のための理論研究を行うものである。①と②に関して、 2021年度までに台湾での文献調査・参与観察調査、さらに中国大陸、ベトナムでの現地調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で渡航困難となり、予定していた海外調査はすべて中止とした。このため[研究実績の概要]で示したように、これまでの研究データを整理し、著書や論文、学会発表の形で公表することを中心に活動を進めたが、新たな民族誌データの収集が進まなかったため、当初の予定よりやや遅れている状況にある。
|
| 今後の研究の推進方策 |
2022年度も、①原住民の手工芸環境の変化と政策的背景の解明、②織物制作と流通についてのフィールドワーク、③民族誌記述と分析概念の構築のための理論研究を行うことを予定している。昨年度まで実施することができなかった②の海外フィールドワークをできる限り早い時期に実施したいと考えているが、新型コロナウイルス感染の収束が見通せないことから、現時点では具体的な予定が立てられられない状況にある。したがって、2022年度前半は、現時点で入手可能な報告書、地域誌および民族誌をもとに①を進め、③についても継続して先行する人類学的議論の整理と検討を進める。2022年度中旬にフィールド調査が実施できた場合、成果公表のための事例整理を年度末までに行う。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
2021年度までに、台湾での3週間程度のフィールド調査、また中国とベトナムでそれぞれ実地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により渡航中止となったため未使用額が生じた。これら未使用分は、2022年度半ばまでに海外調査が可能な場合にはその費用に、海外調査が困難な場合は資料購入費および英文校閲・翻訳費等として支出することとしたい。
|
