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2023 年度 実施状況報告書

東アジアの先住民工芸とオーサーシップをめぐる人類学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K13276
研究機関成城大学

研究代表者

田本 はる菜  成城大学, 文芸学部, 専任講師 (20823800)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードクラフト / 先住民 / オーサーシップ / 台湾原住民族 / エスニック・マーケティング / 文化産業 / 東アジア
研究実績の概要

本研究は、今日の台湾先住民族の手工芸実践において、技能や作品をめぐるオーサーシップがどのように形づくられているのかを、近隣諸外国にまたがる布製品の制作と流通についての民族誌的調査から明らかにするものである。
前年度までに引き続き、オーサーシップに関する文献研究を進めるとともに、台湾でのフィールド調査を実施した。具体的には、(1)台北市で開催された「全国原住民族運動会」など、行政主催の文化行事における民族衣装の着用状況の調査、これに伴う服飾品売買の様子について調査を行うことができた。(2)昨年に引き続き、台北市内の大規模な布市場での観察と聞き取り調査を実施した。先住民族の手工芸従事者のみならず、布と布製品の卸売に携わる漢民族にインタビューを行い、いわゆる「民族風」という服飾品のスタイルが先住民族と漢民族との協働から生み出されている点について情報を得ることができた。(3)台湾における先住民族の知的財産権(「原住民族伝統智慧創作保護条例」)の運用に関して、先住民族による権利申請と認定、その後の展開についての新たなデータを収集することができた。これはオーサーシップの画定について考察する上で有用な情報である。
成果公表という点では、本研究における文献研究の成果を含む単著論文を『文化人類学』誌に発表することができた。また台湾で行われた国際会議において口頭発表を行い、現地の研究者との意見交換を行うことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度も、当初予定していた中華人民共和国での調査が引き続き困難であり、台湾でのフィールド調査が中心となった。ただし、台湾調査において、先住民族の知的財産権(「原住民族伝統智慧創作保護条例」)の運用に関する新たなデータを得ることができたこと、その内容をこれまでの文献研究と関連づけて考察する道筋が見えてきたことから、おおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

2024年度も、①台湾先住民族の手工芸環境の変化と政策的背景の解明、②服飾品制作と流通についてのフィールドワーク、③民族誌記述と分析概念の構築のための理論研究を行う予定である。また本年度は最終年度となるため、これまでに収集した民族誌的データの整理と分析を進め、口頭発表や論文の形で成果公表を行う。ただし、当初予定していた中華人民共和国でのフィールド調査は引き続き困難と予想されるため、台湾における先住民族の知的財産権(「原住民族伝統智慧創作保護条例」)の運用に関する新たなデータを含め、台湾で収集したフィールドデータを中心に分析と考察を進める。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた中華人民共和国でのフィールド調査が実施困難だったことから、主に旅費について未使用額が生じた。2024年度も同国でのフィールド調査は実施せず、台湾での短期調査および文献購入、さらに台湾の専門家を招聘した日本でのワークショップ実施にかかる経費として支出することを予定している。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] 台湾先住民セデックと三つの織り機2024

    • 著者名/発表者名
      田本はる菜
    • 雑誌名

      季刊民族学

      巻: 48 ページ: 96-104

  • [雑誌論文] オーセンティシティを成形する2023

    • 著者名/発表者名
      田本 はる菜
    • 雑誌名

      文化人類学

      巻: 88-3 ページ: 486~504

    • DOI

      10.14890/jjcanth.88.3_486

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 読まない文字を織り込む 戦後国民党統治下の山地と布装飾の変容2023

    • 著者名/発表者名
      田本はる菜
    • 雑誌名

      第16回台日原住民族研究論壇 会議手冊

      巻: (16) ページ: 50-61

  • [学会発表] 〈歓待と台湾原住民族〉を考える2024

    • 著者名/発表者名
      田本はる菜
    • 学会等名
      「現代アジア・オセアニアにおける他者への想像力と歓待の実践知に関する人類学的研究」第2回研究会
  • [学会発表] 先住民の伝統知識と持続的発展 台湾の取り組みから2024

    • 著者名/発表者名
      田本はる菜
    • 学会等名
      東京都市大学世界展開力強化事業 第2回シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 「読めない布」から「読む布」へ? 台湾先住民と布装飾の視覚言語化をめぐって2023

    • 著者名/発表者名
      田本はる菜
    • 学会等名
      成城大学民俗学研究所所員例会
  • [学会発表] 読まない文字を織り込む:戦後国民党統治下の山地と布装飾の変容(織入不做解釋的文字:戰後國民黨統治下的山地與布織裝飾的變化)2023

    • 著者名/発表者名
      田本はる菜
    • 学会等名
      第16回台日原住民族研究フォーラム
    • 国際学会
  • [学会発表] 知識を囲い込みながら開く 台湾先住民の知的財産とオープンソース化2023

    • 著者名/発表者名
      田本はる菜
    • 学会等名
      慶應義塾大学東アジア研究所創立20周年記念公開シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 台灣原住民族編織工藝中 「文字織紋」再探討2023

    • 著者名/発表者名
      田本はる菜
    • 学会等名
      川流與溯源 2023 年政治大學USR 永續發展國際研討會
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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