研究課題/領域番号 |
20K13277
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
松岡 薫 天理大学, 文学部, 講師 (90824350)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 俄 / 民俗芸能 / 演技 / 創造性 / 即興性 / 共同体 / 熊本 / 長崎 |
研究実績の概要 |
本研究は、「民俗芸能の演技がいかに創造されているのか」という問いに対し、演技の一回性・即興性を特徴とする俄(にわか)という民俗芸能を対象としたフィールドワークを実施し、演者と観客のやり取り、演技に対する評価のあり方、演技の制作過程などに注目して、「見る-見られる」関係と演技の創造性との具体的な相互関係を考察することを目的とする。 初年度は、当初、岐阜県美濃市、熊本県阿蘇郡高森町、長崎県新上五島町有川郷での現地調査を予定していたが、covid-19の流行によりいずれの地区の祭礼も中止になってしまったうえに、現地でのインタビュー調査も行い難い状況となったため、滞在型の現地調査の予定を変更した。その代わり、これまでの研究で集めた俄の上演を撮影した映像記録の分析や、西日本各地に伝承されている俄の芸態的特徴について分析を行った。 そして、これまでの研究成果にくわえ、初年度に行った上記の研究成果をあわせ、『俄を演じる人々―娯楽と即興の民俗芸能―』(森話社、2021年2月)を刊行した。ここでは、熊本県阿蘇郡高森町の風鎮祭で演じられる俄を事例とし、俄を演じる青年たちがいかに演者コミュニティに参加し、演技の技法を身につけるのかを論じた。このほか、熊本文化財保護協会の依頼で2020年度第3回文化財研修会にて研究成果を発表する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大防止のため中止となったため、「「高森のにわか」の特徴とその意義」という短文を熊本文化財保護協会の会報に執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に述べたように、全国的なcovid-19の蔓延によって当初予定した調査が満足に行えなかった。しかしながら、これまで収集した調査データを活用し、上演の様相の書き起こしや、全国的な分布の整理を行った。これによって、上演形態の類型を示すことができた。この内容については、2021年2月に刊行した『俄を演じる人々―娯楽と即興の民俗芸能―』のなかで執筆した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も、現地で祭礼が開催されないことが予想されるため、当初予定していた祭礼の観察調査に重点を置くことは断念し、これまで収集した調査データをもとに、俄の演目内容(題材、登場人物、粗筋)や演技中の台詞や所作、「落とし」と呼ばれる締めの言葉(落語のサゲにあたる、掛け言葉)といった点を抽出し、比較検討する。 covid-19の感染状況が改善し、現地調査が可能となれば、演者へのインタビュー調査などを中心に現地調査も実施していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19の蔓延状態をうけて、予定していた国内出張が中止となり、当該年度の予算を消化することができず、繰越金が生じた。次年度も同様の状況が続く可能性が高いことを鑑みて、繰越予算については、すでに収集してきた調査記録の分析を行うための機材購入に充てる予定である。
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備考 |
「「高森のにわか」の特徴とその意義」(2020年9月、熊本県文化財保存協会会報に寄稿) 「「高森のにわか」深く考察」(『熊本日日新聞』2021年3月4日記事) 『俄を演じる人々―娯楽と即興の民俗芸能―』の刊行に関連して、著書の紹介記事が掲載された。
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