今年度は、ジョージアで民俗舞踊が舞台で演目として上演されるようになった背景について、トビリシの民俗舞踊の研究者らと議論を行った。ステージにおける民俗舞踊の上演は、20世紀初頭のグルジア語のオペラの演目を通じて一般化した可能性が明らかになった。 ジョージアの首都トビリシは、コーカサスにおいてオペラやバレエをはじめとする西洋の芸術文化の受容が比較的早く進んできた地域であり、これまで行ったアディゲ共和国の音楽家や舞踊家への聞き取り調査からは、20世紀以降、特にソ連時代には、北コーカサス地域からの留学生が、西洋音楽やバレエ、舞台演目化されたコーカサスのさまざまな民俗舞踊を学びにトビリシを訪れていることが明らかになった。彼らはその後、ポストソ連期の北コーカサスの歌舞アンサンブルで中心的に活躍している。コーカサスの諸民族の文化の発展に、トビリシが果たした役割は大きく、コーカサスにおける西洋の芸術文化の受容過程について個別に考察する必要があるのではないかという結論に至った。 なお、20世紀のコーカサスで進んだ民俗舞踊の舞台演目化については、2024年にアディゲ国立大学で開催された国際学会で、同時期の日本における宝塚歌劇団などの事例と比較しながらオンラインで報告を行った。
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